王者が初戦で散った。4連覇をかけた明成(宮城)が68-81で尽誠学園(香川)に敗れた。出だしから動きが硬く、体を張った持ち前のプレーが発揮できなかった。昨年まで在籍し、3連覇の中心メンバーだった八村塁(18、現米ゴンザガ大)の弟阿蓮(2年)がスタメン出場。爆発力を期待されたが、力を出し切れなかった。名将佐藤久夫コーチ(67)は「明成らしさ」が欠けていたと振り返り、選手育成の難しさと来年への原点回帰を語った。

 まさかの展開だった。明成が終盤に点差を引き離される。ルーズボールで競り負け、リバウンドも手に付かない。第4ピリオド(P)で一時2点差まで詰め寄るも、終わってみれば13点差の完敗。3連覇を遂げた昨季までの強さは、無かった。試合後、八村亜蓮(2年)は「全く力を出し切れずに終わってしまった」と涙を浮かべた。

 重圧が苦しめた。周囲の4連覇への期待が動きを硬くした。出だしから相手のゾーン守備に苦しみ、攻めきれない。後半の第3Pには相手の鋭いドライブへの対応に苦しみ、ファウルを重ねてフリースローを献上。その10分間でついた13点差をはね返せなかった。八村が「気持ちの面で最初から引いてしまった」と話せば、佐藤コーチは「自分たちの力を出し切れないチームというのが率直な感想」と気持ちの弱さがあった。

 平常心を植え付けたはずだった。練習では試合終盤に逆転するメニューを実施。試合前のミーティングでも佐藤コーチは「練習をそのままコート上で表現、演じればいい。1本のシュートで30点取れないように、気負う必要はない」と選手に伝えた。4連覇という言葉は一度も使わなかった。だが歓声や雰囲気にのまれた。清水翔太主将(3年)は「相手の激しさに負けていた部分がある」と、選手皆が気負ってしまった。

 原点回帰を求める。敗戦後、佐藤コーチは「明成らしさが欠けていると思う。ルーズボールに負け、体を張っているバスケットがどこかにいってしまった。それを戻さないと。新たなエースを求め、個人指導を含めてチームを作っていきたい」と反省した。必要なのは勝利への執念を燃やし、泥臭く走るバスケだった。

 八村は「周りにばっかり頼ってはいけない。全部自分でやってやるという気持ちでやりたい」と涙を拭いた。来年の雪辱へ、負けからはい上がる。【島根純】