ノーサイドの笛が鳴ると、桐蔭学園(神奈川)のNO8山本龍亮主将(3年)は青空を見上げた。両手でこぼれる涙が抑えきれない。「こんな涙を流したくなかった。最後は全国制覇して涙を流したかった。東福岡とも対戦できず、悔しい思いしかないです」。自身初の花園の舞台。チーム一、優勝への思いが強かった。

 今大会の同校はスター選手不在で「総合力」で戦った。藤原監督も「平均よりちょっと上の集団」と表現していた。準優勝した前大会を経験した3年生が6人いる中、主将はなぜか山本龍だった。前大会は左足首脱臼のけがでスタンドにいた。主将になり「先輩が築いた桐蔭学園の名を全国にとどろかせよう」との思いを込めて、チームテーマを「轟く」にした。“山本改革”で、下級生が試合で精いっぱい力が出せるように、レギュラー関係なく3年生が積極的に荷物運びやサポートなどに回った。裏方を経験したからこその策であり、101人の集団がまとまった。今春からは父竜生さんも活躍した明大に進学する。試合後、後輩らを前にこう言った。「このチームは僕の財産です。悔いの残る結果となったけど、幸せな時間でした」。関東で唯一、4強に残った同校をまとめた山本龍がまた青空を見上げた。【峯岸佑樹】