天国の母に勇姿を届ける-。女子アイスホッケー世界選手権(15日開幕、オーストリア)に出場する日本代表スマイルジャパンに初選出されたFW森竹留那(24=トヨタシグナス、北翔大)が平昌五輪代表入りへのアピールを誓った。13年に母雅子さん(享年48)が他界。競技を始めた小1から“応援団長”として支えてくれた母の思いに応えるため、まずは世界選手権で勝利に貢献し、五輪本番での代表入りにつなげる。代表チームは今日4日、成田から敵地へ向かう。

 手にしたチャンスは逃さない。初のスマイルジャパン入りを果たした森竹は、右拳をぎゅっと握りしめ、前を向いた。「不安と緊張でいっぱいですが、とにかく自分のプレーをしてきたい。まずは少しでも試合に出てチームになじめるように。そうした中で、その先の気持ちが芽生えてくるはず」。まず世界選手権で一気に売り込み、平昌五輪への足がかりとする。

 13年6月に母雅子さんが、がんのため48歳の若さで旅立った。直後の14年ソチ五輪は可能性のかけらすらなかったが、それから4年、光が差した。「一番、応援してくれたのがお母さんだった。今回の代表入りを、きっと喜んでくれていると思う」。父喜代志さん(51)もニセコのホテルで調理師を務めながら、国内での試合となれば、すぐに応援にかけつける。そんな家族の思いを一身に背負い、夢への1歩を踏み出す。

 2月の五輪最終予選は、スタンド観戦だった。トヨタシグナスのチームメート、堀や藤本にエールを送った。「観客の1人として、応援するのが自分の役割だと思っていた。正直、五輪はもう無理だと思っていたけど今回、可能性をいただいて自信が芽生えた」。代表初選出は森竹1人と、今は最後尾にいるが、ここから巻き返し、不可欠なピースだということを仲間に知らしめる。

 3月の全日本選手権の際、日本代表山中監督から直々に選出理由を伝えられた。「スピードとコーナー付近でのプレー、泥臭さとキルプレー(数的不利)での守り。そこでアピールできるように」。159センチ、51キロと、体格に恵まれているわけではないが、世代別代表で、海外勢との試合は経験してきた。「私にできるのは走ること。力では自信がないが、抜け出す動きで反則を誘い、パワープレー(数的優位)での好機をお膳立てできたら」。自身の武器を巧みに生かし、代表生き残りを狙う。【永野高輔】

 ◆森竹留那(もりたけ・るな)1993年(平5)3月9日、苫小牧市生まれ。苫小牧若草小1年時に、兄啓太さん(29)の影響で競技を始める。苫小牧西高、北翔大を経て15年にトヨタシグナス入り。11年世界U-18選手権出場、15年ユニバーシアードグラナダ大会(スペイン)3位。現在はネッツトヨタ苫小牧勤務。家族は父喜代志さん、兄啓太さん。159センチ、51キロ。