「QBを1プレー目につぶすなら試合に出してやる」。6日のアメリカンフットボール定期戦で、関学大QBをラフプレーで負傷させた日大3年のDL宮川泰介選手(20)が22日に都内で会見。内田正人前監督(62)と井上奨コーチ(30)の指示で反則したなど経緯を説明した。関学大QBと家族らには18日に謝罪したが「フットボールは続けるつもりはない」とも話した。指示を真っ向否定してきた内田前監督と日大は、さらに追い込まれることになった。

 183センチ、92キロのたくましい体も、20歳になったばかりの宮川選手の口から次々と事実が明かされた。マイナー競技のラフプレー騒動が社会問題にまで発展。何十台というカメラの放列を前に、あの反則は監督とコーチの指示だったと明かした。

 関学大戦の前日5日。井上コーチから「監督にお前を試合に出せるか聞いたら、QBを1プレー目でつぶせば出してやると言われた」。さらに「定期戦はなくなっていい」「QBがケガして秋出られなければこっちの得」。信じられない言葉をかけられた。試合前の整列では井上コーチに「分かっているな」と念押しもされていた。

 宮川選手は3日に「やる気がない」と実戦練習から外された。4日には内田前監督から大学世界選手権の日本代表辞退を通告されるなど連日プレッシャーをかけられた。「つぶせはケガをさせると認識した」反則にも「追い詰められ悩んだが、ここでやらないと後がない。正常な判断ができなかった自分の甘さ」と振り返った。

 退場になって事の重大さに気がつき、ベンチのテント内で泣いた。2日後、監督に退部を申し出たが「罰は(反則で)罰退になって処分は終わっている。気にするな」と引き留められ、個人での謝罪も止められた。苦悩する中で日大が関学大の抗議に回答したが、誠意なく事実は隠されていた。

 「ケガをさせてしまった。指示はされたが僕がやったこと。人のせいではない」。宮川選手は個人で再度申し入れ、18日に関学大QBのもとへ謝罪に出向いた。「うなずく形で受けてくれた」と話した。あとは事実を明らかにしようと会見を開いた。

 内田前監督らの責任を問う質問が再三出た。「監督と直接話はあまりしないので。意見が言えるような環境ではなかった」と言ったが「僕がどうのこうの言える立場ではない。僕がやったことは事実」と自らの責任だけを繰り返した。

 日大豊山高で「初めてのコンタクトスポーツが楽しく熱中した」が、日大では「厳しい環境で気持ちが変わり、好きでなくなった」という。退部にとどまらず「続ける権利はない。もうやるつもりはない」と話した。

 あえて実名で顔も出した。時折、質問にじっと考え込んだが誠実に受け答えした。内田前監督は辞任で責任をかぶっただけで、空港で不誠実な緊急謝罪会見を開いただけ。若者をさらし者にした日大は、また非難を浴びることになりそうだ。