「私は帰ります。さようなら」。昨年6月に第1子の長女を出産した12年ロンドン五輪女子57キロ級金メダルの松本薫(30=ベネシード)が16年リオデジャネイロ五輪以来の実戦復帰を果たした。3人制の女子2部で、松本は初戦の2回戦と3回戦ともに一本勝ちしたが、チームは3回戦で敗退した。

 約1年10カ月ぶりの実戦に松本は「やっと畳の上に立てた。体の仕上がりは70%なので70点かな。体の圧と強みである闘争心をもっと出さないといけない」と振り返った。

 20年東京五輪出場を目指し、「ママでも野獣」として奮闘している。妊娠中もトレーニングを続け、産後1カ月で練習を再開した。午前中に家事をしながら可能な限り筋力トレーニングに励み、夕方から稽古に向かう生活を送る。稽古場に子どもを連れて行ったり、味の素ナショナルトレーニングセンター内の託児室を利用したりもする。今大会は初めて子どもと離れて大会に臨んだ。8日に現地入りして3日間、顔を合わせていない。「娘には結果の前に『寂しい思いをさせてごめんね』という思いがある。ぎゅってしてチューしたい。ごめんなさい。私は早く帰ります。さようなら」。“松本節”は健在で、こう言って取材エリアから姿を消した。

 今後は、8月の全日本実業個人選手権を経て、11月の講道館杯を目指す。