マススタートの女子は平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)金メダルの高木菜那(26=日本電産サンキョー)が初勝利を果たした。2番手で入った最終コーナーでは五輪決勝で見せた“イン差し”でトップに立ち、そのままゴール。約2300人の地元・十勝のファンの前で勝ち切った。女子1500メートルは平昌五輪銀メダルの妹美帆(24=日体大助手)が2位。男子500メートルでは羽賀亮平(30=日本電産サンキョー)が2位に入った。

まるで平昌五輪の再現だった。ラスト16周目の最終コーナー。2番手につけた高木菜は、前方の選手がわずかに膨らんだ内側に入り込んだ。勢いが余り、バランスを崩したがすぐに立て直す。出口でトップになると、そのままゴールに飛び込んだ。

目前にいた選手はイレーネ・スハウテン(オランダ)。状況は五輪決勝と全く同じだった。だが「あの時はインに行くと決めていたが、今日は流れの中で体が自然に反応した」と、五輪のことは頭になかった。久しぶりの“イン差し”で恐怖心もあったが、必死に体を動かした。約2300人の地元ファンの期待に応えようと優勝だけを狙いにいった。

平昌では女子団体追い抜きでも優勝。日本の女子選手史上、初めて同一大会で金メダルを2個獲得した。五輪直後は達成感や故障を抱えている膝の影響もあり、去就の明言を避けていた。「今は今で違う気持ちがある。五輪明けだからこそ、ちゃんとやらないといけない」。団体追い抜き、マススタートで結果を残すためにも「自分の力をつけることが大事」と夏場も陸トレで汗を流した。

競技の魅力を広く伝えていくのも金メダリストの役割だ。「見てる人はヒヤヒヤドキドキして、やってる自分は緊張する。面白いと思ってくれたんじゃないかな」。スタート前は「やってみないと分からない」と繰り返していたが、誰もが納得する女王のレースだった。【西塚祐司】