17年世界選手権男子100キロ級覇者のウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)が、決勝で12年全日本王者の加藤博剛(千葉県警)に延長の末、技ありで優勢勝ちし、初優勝を果たした。持ち味のスタミナを武器に準々決勝では過去3度制覇の王子谷剛志、準決勝では小川雄勢と最重量級の強敵を撃破した。

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4度目の挑戦で「オオカミ」が悲願の全日本王者となった。準決勝まで4試合連続で一本勝ち。“寝業師”加藤との決勝で、延長に突入した5分29秒。組み手争いを制して支え釣り込み足で技ありを奪って、勝負を決めた。右手を力強く握り、観客席にいた両親に向かって指で「1」を差した。「100キロ級が日本一を証明することができて大きな自信になった。令和時代に向けて最高のスタートが切れた」。珍しく、感極まって涙した。

夢だった。中学時代に100キロ級の井上康生男子監督らが全日本王者になるのを目にし「再び、100キロ級の時代を築く」との強い思いがあった。17年大会決勝では王子谷に敗れてあと1歩だった。昨年1月に左膝を手術し、4カ月後の世界選手権を考慮すると故障リスクもあったが「日本の最重量級に勝てないと、世界の100キロ級には通用しない」として、準備に万全を期した。恩師の東海大の上水監督は「馬力だけに頼らず、勝負の駆け引きも出来ていた」。グルメであり、通常は110キロ超で体重管理が悩みだったが、今回は減量なし。「一番動ける」とする108キロで臨んだ。強みのスタミナ強化を図るため、3月の関東予選(宇都宮市)前日には大量のギョーザを平らげた。

全日本、世界選手権、五輪の「3冠」を最終目標とする。平成最後の伝統ある大会で、初めてカタカナ表記の優勝者の名を残した。「これで20年東京五輪に3冠の王手をかけられた。名前の通り、ワイルドに突き進みたい」。野性味あふれる23歳の柔道家の進化は止まらない。【峯岸佑樹】

◆ウルフ・アロン 1996年(平8)2月25日、東京都生まれ。6歳で柔道を始める。千葉・東海大浦安高時代は高校選手権、金鷲旗、高校総体などで優勝。東海大時代は15、16年講道館杯を連覇。17年全日本選手権準優勝、同世界選手権優勝。世界ランク5位。左組み。得意技は大外刈りと内股。米国人の父と日本人の母を持つ。181センチ。