世界ランキング1位の桃田賢斗(25=NTT東日本)が、同17位の西本拳太(25=トナミ運輸)に21-14、21-12を破り、連覇を達成した。優勝が見えてきた第2ゲーム終盤、西本のショットがアウトになると「ヘイ! ヘイ! ヘイ!」と大きな声を上げ自分を鼓舞した。「自然と声が出ました」。勝利の瞬間は、右拳を握った後に左手を大きく突き上げた。

全日本総合には人一倍思い入れが強い。「取りたいというのを最初から言っていて、自分らしく最後までできたかな」と笑顔で語った。日本での数少ない試合。「プレーでしか返すことができない」とサポートしてくれるチームやファンに見てもらえる恩返しの機会を大事にしている。

何度も経験している決勝の舞台だが、桃田は「入場したときは緊張感があって、基礎打ちは足が震えるくらいだった」という。所属のNTT東日本の須賀監督は「日本で試合をすると、優勝したい気持ちもあるが、相手も向かってくる気持ちが強く、保守的になってしまう」と話す。実際に札幌で行われたS/Jリーグでも「ちょっと大事にいきすぎた」と反省していたという。

それでも準々決勝、準決勝とフルゲームの試合を勝ち上がり、疲労もたまっている西本に対し、第1ゲームから前後に揺さぶり、ネット際に落とすヘアピンショットを多用。さらに長いラリーを続けながら体力を消耗させ、西本がスキを見せたところで豪快にスマッシュを打ち込んだ。第2ゲームも勝負に出た西本のスマッシュを、際どい場所に返し、逆にミスを誘うなど、徐々に点差を広げた。10-7の場面ではチャンスボールを豪快にストレートに決めた。飛び込んだ西本はあおむけに倒れ込み、天を仰いだ。その後は一気に点差を広げて第2ゲームも奪い、優勝を飾った。

19年ワールドツアーで10勝を挙げた。4月末からスタートした東京オリンピック(五輪)選考レースでも独走。安定した強さを続ける桃田に、日本代表朴監督は「昨年よりフィジカルが強くなったし、ある程度の自信ができたのかな」と納得の表情で語る。世界1位になった昨年から精神面も成長した。「昨年は世界1位でいいのかなという気持ちもあったが、今年は(ワールドツアーで)10勝できた。自分が求めている世界1位はまだ遠いけど、少しずつ近づいている」。国内も国外にも敵なしになってきた桃田。東京五輪金メダルへ死角は見当たらない。【松熊洋介】