異色のコラボが実現した。競泳男子の渡辺一平(22=トヨタ自動車)とサッカー元日本代表のラモス瑠偉氏(62)が新春に初対談。東京オリンピック(五輪)200メートル平泳ぎで金メダルが期待される渡辺に対して、数々の修羅場をくぐり抜けてきたラモス氏が魂のエールを送った。プロフェッショナル、日の丸の重み、東京五輪について、年齢、競技の枠を超えて語り合った。【取材・構成=益田一弘、荻島弘一】

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-お互いの印象は

ラモス氏 同じマネジメント会社(LDH)に競泳選手が入ると聞いて調べたよ。世界選手権でメダルをとっているが、会うと気さくで芯がある。親を大事にするすてきな人。

渡辺 高校時代の僕から考えたら、この対談が信じられない。テレビでみたままの男という感じです。

ラモス氏 ずっと怒っているイメージ?

渡辺 ははは。

-2人とも勝負にこだわる姿勢に共通点がある。

ラモス氏 こだわらなかったらここまでこれない。

渡辺 僕もめちゃめちゃ負けず嫌い。競泳が自分の強さを表せる場所。自然と水泳が好きになって速い人を調べたり、分析をする。線が細い僕がどうやって勝つか。技術を磨くしかない。そこをどんどん自分に取り入れて追求しています。

ラモス氏 話を聞くとプロだよね。プロの考え方。勝ちたいから、自分だけじゃなくて、相手の研究、分析もする。細い自分がどうやって戦うか。おれもそうだった。83年にドイツ(当時西ドイツ)に1カ月いった時、ドリブルは通用しなくてすごく悩んだ。日本人よりもでかくて足が長い。細かなフェイントよりもスピードで勝負したり、早めにボールを出すなどの工夫をして、克服した。常に、常に考えなきゃだめ。

渡辺 与えられたメニューをやるだけでは自分のためにならない。でも自分なりの考えでやると周りに「努力していない」と思われることもある。競泳のことは人の3倍は考えている。

ラモス氏 コーチと選手の信頼関係があれば、問題ない。周りの関係ない人がいろいろいってくるんだけど、気にすることはない。自分でぶれずにやること。

-ラモス氏は日本国籍取得から30年になって、日の丸の重みをどう考える。

ラモス氏 国を背負うほど名誉なことはない。ぼこぼこにされたら、自分だけではなく、日本サッカー全体が弱い、日本が弱いと言われるのだから背負うものが違う。今のサッカー選手に薄れているところかもしれない。ラグビーのリーチ・マイケルは会ったことはないが、最高の男、最高の選手だと思うよ。

-東京五輪は自国開催

ラモス氏 自国開催の関心は半端ではない。今まで一平に興味がない人も注目する。そして応援もしてくれる、マイナスなことは何もない。みんながすごいエネルギーを送っている。期待の難しさはあるが、でも半分以上が真剣にいいエネルギーを送ってくれる。

渡辺 東京五輪は競泳が注目されていて、チケットも高額。しかも日本のお家芸は200メートル平泳ぎで金メダルをとることを、皆が思い描く理想的な結果。金かそれ以外かという期待に応えるのは、すごくプレッシャーですが、僕としては光栄なことと思う。

ラモス氏 その期待に応えるのが一平の使命だよ。子供たちが活躍する一平に憧れる。来日直後の77年の日本サッカーは土のグラウンドで観客も300人ぐらい。ほとんどが選手の家族か知り合いだった。

渡辺 今の競泳界も似たところがあるかもしれない。競泳は見ていて、面白いですか?

ラモス氏 準決勝からが面白い。タイムだけでなく決勝への駆け引きとかね。

渡辺 競泳は練習が厳しい競技だと思う。1人でずっとプールの壁と床しか見ない。誰かの動きで自分の行動を変えることもない。

ラモス氏 サッカーと全然違う。このプレッシャーと努力はハンパじゃない。私は調子悪い時は皆が助けてくれた。でも競泳にはない。時計と自分との戦いですごいスポーツだと思う。

渡辺 僕が泳ぐことで見ている人に何かを感じてほしい。昨年から「魅せる」ことを意識している。だから東京五輪はめちゃめちゃ楽しみ。4月に日本選手権は一発勝負の五輪選考。そこで世界記録に挑戦したい。五輪前に最も注目される試合で、自分がどういうパフォーマンスを出せるのか。五輪の予行演習にしたいし、会場も1万5000人満員になってほしい。

ラモス氏 それは最高だよ。先輩としていえるのは自分に負けないでということ。自分に負けたら後悔する。日本選手権、東京五輪での一平の活躍は楽しみ。東京五輪の一番の楽しみは一平だよ。仲間が出場すると全然違う。おれは多分、見てて緊張しちゃうな。フォルツァ! 一平!

◆競泳の東京五輪代表選考 4月の日本選手権が唯一の選考会。五輪本番会場の東京アクアティクスセンターで行われる同選手権の決勝で、日本水連が定めた派遣標準記録をクリアした上位2人が代表に内定する。派遣標準記録は、19年世界選手権の決勝進出ラインで設定されており、男子200メートル平泳ぎは2分8秒28。渡辺の自己ベストは2分6秒67。

◆渡辺一平(わたなべ・いっぺい)1997年(平9)3月18日、大分県生まれ。佐伯鶴城高-早大-トヨタ自動車。200メートル平泳ぎが得意で、16年リオデジャネイロ五輪準決勝で五輪記録2分7秒22を出すも決勝は6位。17年1月に世界記録(当時)2分6秒67をマーク。17、19年世界選手権銅メダル。昨年7月にチュプコフ(ロシア)が出した世界記録2分6秒12の更新を目指す。身長193センチ、体重78キロ。

◆ラモス瑠偉(るい)1957年(昭32)2月9日、ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。77年に当時日本リーグ2部の読売クラブ入り。攻撃的MFとして活躍。89年に日本国籍取得。98年に現役引退。ビーチサッカー日本代表監督として05年と19年のW杯で4位。東京V監督、岐阜監督などを歴任。18年に殿堂入り。日本リーグ1部210試合69得点、Jリーグ147試合9得点、国際Aマッチ32試合1得点。