国際スケート連盟(ISU)は11日、フィギュアスケートの20-21年シーズン新採点基準を発表した。ジャンプの基礎点が改定となり、現在最高難度の4回転ルッツが11・50点から11・00点に下がり、同ループが10・50から11・00点に上がった。11・00点のまま維持されたフリップも加えた計3本の4回転ジャンプが同じ基礎点で並んだ。10年バンクーバーオリンピック(五輪)代表の小塚崇彦氏(31)が解説する。

平昌五輪後の18年7月以来、約1年10カ月ぶりにジャンプの基礎点が改定された。最高得点を狙って挑むスケーターが男女とも増えていた4回転ルッツに歯止めがかかる形となり反対に成功者数が少なかったループに加点。変更がなかったフリップを含め11・00点で統一された。03-04年のISUジャッジングシステム採用以降、現状でトップ3のジャンプに初めて基礎点の差がなくなった。

より出来栄えも重視される流れで、日本勢には悪くない。4回転のフリップは宇野昌磨が16年4月に、ループは同9月に羽生結弦が世界で初成功。特にループは、まだ誰も跳べていない4回転半(クワッドアクセル)を除けば最も成功順が遅かった難易度。ISU技術委の中で基礎点の低さを疑問に思う声も出ていた。一方、羽生が着氷を目指す4回転半は12・50点が保たれ、同ルッツとの差は1・50点に拡大。夢は膨らむ。

3回転も変更。ルッツが0・60点減の5・30点でフリップと並ぶなど割を食った。回転不足には「q(クオーター=4分の1)」マークが新設され、基礎点100%で出来栄え点(GOE)が減点に。新型コロナウイルスの感染状況を見ながら今秋から採用される予定だが、選手にとっては氷上で練習できない時期に対応を迫られる。【木下淳】

※4回転ジャンプの基礎点

ルッツ  11.50点→11.00点

ループ  10.50点→11.00点

フリップ 11.00点 変更なし

アクセル 12.50点 変更なし

サルコー  9.70点 変更なし

トーループ 9.50点 変更なし

<小塚崇彦氏の解説>

小塚氏は採点の新基準に目を通すと「選手がやらなければならないことの、大局が変わることはないでしょう」と率直な感想を口にした。大きな変更点は男子トップ選手が組み込む、4回転ジャンプの基礎点。今季はルッツ、フリップ、ループの順に0・50点ずつの差があったが、7月からの新シーズンは3つの基礎点が11・00点で統一される。その影響はどう出るのか。

小塚氏 この新基準を踏まえて、選手の取り組みは特に変わらないと思います。ただ、フリーで世界のトップを争う選手が、そろって完璧な演技などをして並んだ場合。その時は羽生(結弦)選手、宇野(昌磨)選手の日本勢が、小さな得点の追い風を受けるかもしれません。究極の勝負は、コンマ何点差で順位が変わることもあります。

基礎点が統一された3種の4回転に着目すると、世界選手権2連覇中のチェン(米国)は、すでにISU公認大会で全てに成功。羽生はルッツとループ、宇野はフリップとループの2種を決めている。だが、チェンも直近の2季はISU公認大会でループを組み込まず、2種で構成してきた。

小塚氏 世界選手権や五輪で、3種全てを組み込むのはリスクがあります。2種での勝負になった場合、日本の2人が用いるループが基礎点で並んだのは大きいでしょう。ただ、勝つために大切なのは、今までと変わらずトータルパッケージ。全てを出し尽くした上で、結果を振り返ると「変更された基礎点が効いた」となる可能性はあります。

新型コロナウイルスの影響で、世界的に練習への制限が出ている。新たな高難度ジャンプの習得など、オフシーズンの計画に狂いが生じることも懸念される。

小塚氏 世界中の選手が技術面で、まずは「維持」を目指すでしょう。「どうトレーニングをするか?」と考えている状況。高難度ジャンプも出来栄え点や、演技構成点の向上につながっていく「質」を高める練習が中心となりそうです。