白血病から再起を目指す競泳女子の池江璃花子(20=ルネサンス)が、29日に1年7カ月ぶりの復帰レースを迎える。東京都特別大会(東京辰巳国際水泳場)での女子50メートル自由形にエントリー。同大会は五輪2大会連続2冠の北島康介氏(37)が会長を務める東京都水泳協会が主催する独自大会。北島会長は池江に注目しつつ、選手の安全を守るために、大会独自の感染症対策を策定している。

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池江が、再びスタート台に立つ。舞台は東京五輪の水球会場でもある東京辰巳国際水泳場。日本選手権、国際大会と数々のビッグイベントが行われてきたスイマーたちの聖地だ。池江は白血病で昨年2月から10カ月間入院し、今年3月からプールで練習再開。「病気の人たちにここまで強くなれると知ってもらいたい」という決意を胸に、池江がレースに戻ってくる。

そんな20歳に向けて“レジェンド”も注目する。

北島会長 彼女のストーリーがいろんな人に力を与えると思う。選手の負担にならないよう協力したい。

東京都特別大会は、東京都水泳協会がレースがなくなったスイマーたちを救済するための独自大会。池江は、当面の目標である日本学生選手権(10月)での個人種目出場に一定のタイムが必要なために、今大会にエントリーしている。重要なのは安全面になる。

北島会長は、感染症対策のために今大会専用のガイドラインを策定。医療コンサルティングを行うキャピタルメディカ社の協力を得て、3日には模擬レースも行った。招集所でのマスク着用、スタート台に触れる際は手指消毒などを設定。「すべての競技順序を提示して、ガイドラインを作った。こういう状況(コロナ禍)で試合がひとつのモチベーションになる。もちろん安全対策でリスクがゼロになるわけじゃないが、何もしないでプールに飛び込んでもらうわけにはいかない」と北島会長。運営側として、選手たちが安心できる場を提供したい-。

そんな思いにも支えられてスタート台に立つ池江。もちろん体調が最優先だが「いざプールに戻ると『楽しい』が勝ってプレッシャーを感じるより水泳が楽しい。このまま上がっていければ」という20歳が第1歩を踏み出す。【益田一弘】

 

◆池江の経過 19年1月13日に三菱養和スプリントに出場も精彩を欠いた。同2月8日、オーストラリア合宿中から緊急帰国、白血病と診断されて入院。同12日にツイッターで病気を公表。同3月6日にはSNSで「思ってたより、数十倍、数百倍、数千倍しんどいです」とつづった。同12月17日に10カ月の闘病生活をへて退院。今後の大目標を「2024年のパリ五輪出場、メダル獲得」とした。今年3月17日には406日ぶりにプール練習。当面の目標に日本学生選手権(10月、東京辰巳国際水泳場)を掲げた。7月23日には五輪1年前セレモニーに登場した。

 

◆東京都特別大会 東京都水泳協会の独自大会で無観客で行われる。予選、決勝の形式ではなく、すべてタイムレース決勝。選手は1日1種目1本を泳ぐ。今月下旬から小、中、高、シニアの4部門に分かれて東京辰巳国際水泳場で開催。シニアの部は29、30日の2日間。どの時間帯にでも会場内の人数を1000人以内にするために、午前と午後で選手、競技役員をすべて入れ替える措置をとる。