男子テニスで世界35位の錦織圭(30=日清食品)が、27日開幕の全仏オープン(パリ)で、昨年8月の全米以来の4大大会に出場する。

サーブの改良に着手した錦織の新たなる挑戦を、3回にわたって解き明かす。2回目はMLBのダルビッシュ、前田健太の投球動作を学んだ理由。

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錦織は19年10月22日に手術をし、ナショナルトレセン(NTC)に戻ってきたのが11月中旬だ。手術前に、日本協会男子代表の高田充ヘッドコーチ(51)は、錦織の投球動作に癖があることを発見。投げると音がする楕円(だえん)球を使い、投球フォームをチェックしていた。

手術後は週に2、3回、担当の理学療法士が付き添い、リハビリ、ウオーミングアップ、投球動作を行った。高田コーチが「この動きをしたい」と療法士に伝えると、そのためのリハビリをして投球に移った。当時は、1日多くて2時間の練習で、投球が主だった。

サーブの改良点は、大きく分けて「ゼロポジション(0P)の確保」、「構えの手首の角度」、「打点に胸を向ける」、「ラケットを担ぐ動作の小型化」の4つだ。そのうち、最大の修正点は、サーブを打つスイング軌道で、0Pを確保することだった。

0Pは、両腕を水平に広げる角度を180度とすれば、やや斜め上に上げた130~140度の角度だ。肩に最も負荷がかからず、腕を内外にひねるにも楽。力が最も入りやすい。高田コーチは「メジャーのダルビッシュや前田健太の投げるしなり方。あれがゼロポジション」。動画を見て、投球動作の重要性を説いた。

錦織のサーブは、腕が水平から見て90度、右耳のそばを通り、打点で上にまっすぐ伸びる。手首を手のひら側に折ることで球をコントロール。それでは力も入らず、手首の折り方の微妙な違いで、球が飛ぶ方向も狂う。それがひじや手首に負荷をかけていた。

サーブのスタートから、なぜか錦織は手首を手のひら側に折って構える癖があった。0Pの軌道でスイングするには、その角度で手首は使わない。修正のため、グリップを少し変え、手首を折らないように、構えの度にチェックした。

19年11月下旬ぐらいから、スポンジ球を使いサーブの練習を始めた。最初、錦織は「これではちょっと無理。強く打てない」と困惑した。しかし、やるしかない。黙々と淡々と繰り返し、高田コーチは何度もフォームの動画を撮影し、修正を重ねていった。(続く)

◆全仏オープンテニスは、9月27日から、WOWOWで連日生中継。また、WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信予定。