女子ショートプログラム(SP)2位の紀平梨花(18=トヨタ自動車)が、まさかの7位で初の表彰台を逃した。フリー9位の126・62点にとどまり、合計205・70点。28日に17歳となるSP1位アンナ・シェルバコワが、合計233・17点で初出場初優勝を飾った。ロシア勢が表彰台を独占。坂本花織(シスメックス)は6位、宮原知子(関大)が19位となった。日本は上位2人の順位合計が「13」以内の条件を満たし、来年の北京冬季五輪の国・地域別出場枠争いで2大会ぶりに3枠を獲得した。

   ◇   ◇   ◇

両手を合わせた紀平が、目に入った得点に表情を曇らせた。首位と1・92点差。初の世界女王が懸かった4分間は、冒頭から崩れた。代名詞のトリプルアクセル(3回転半)は2回転半となり、2本目は転倒。演技最終盤の3回転ルッツも乱れた。「申し訳ない演技になってしまった」。シニア3季目で初のフリー120点台。自己ベストに28・10点届かなかった現実を、18歳は冷静にかみしめた。

「驚きというより『やっぱり』となった。気持ちの面で集中できていたのに、体は寝ている状態。足がフワフワとした感じでした」

失速の最大の要因に「時間への対応」を挙げた。2日前のSPは現地時間午後3時台に演技したが、今回は午後9時38分。睡眠を調節できず「夜型にしておくべきだった」と反省した。この日は1度きりの公式練習が練習用リンク。得点源となる4回転サルコーは「間に合わないだろうな」と自信が持てずに回避した。新型コロナウイルスの影響により、シーズンの集大成でありながら今季2戦目。1つの演技という枠を超えた、競技会ならではの要素に歯車は狂わされていた。

それでも得たものがあった。6位だった坂本と合わせ、日本勢は22年北京五輪の最大3枠を獲得。3年前の平昌五輪を4大会ぶりの2枠で戦った、日本代表の悔しさを晴らした。「一応3枠を取れたのでホッとしたけれど、1から本気でやり直したい」。その言葉にエースの自覚がにじんだ。

目標は22年北京五輪金メダル。今大会のロシア勢はSP12位トルソワが、男子顔負けの4回転4種5本で3位まで順位を上げた。SP首位のシェルバコワは冒頭の4回転フリップで転倒後、冷静に3回転までのジャンプで逃げ切った。その2人も五輪切符を得る保証はない。2月の国内大会でワリエワ、フロミフ、ウサチョワの14歳トリオが今大会2位のトゥクタミシェワを上回った。3人は来季のシニア転向が可能。紀平はやるべきことを理解する。

「4回転も2本入れる練習をしたい。『もっともっと。足りないよ』と言われていると思って、何もかも追い込まないといけない」

約10カ月半後、北京の地で笑いたい。【松本航】