世界49位の錦織圭(31=日清食品)が、大坂にエールを送る死闘を制した。同25位で第23シードのハチャノフ(ロシア)に4-6、6-2、2-6、6-4、6-4で勝ち、全仏のセンターコートでは19年2回戦以来の勝利。2試合連続のフルセット4時間超えの激戦を制し、4大大会では19年全米以来の3回戦進出だ。試合後には、「早く治してほしい」と、大坂を気づかった。

    ◇    ◇    ◇

2試合続けての錦織劇場だ。「意識がもうろう。魂が抜けていた」。何度も好機がありながら、3セット目を落とし「ぼうぜんとした」。しかし、心身ともに限界でも「体が動きたくないけど動いちゃうってところが、すごいなと」、自分でも驚く“劇勝”だ。

できれば5セット試合は「やりたくない」。心身ともに消耗し、「大会のスタートとしては最悪」と言う。それでも、5セットは通算26勝7敗で、ジョコビッチやナダルも上回り、現役男子最高勝率の5セット・キング。勝利へのひたむきさが、ファンの胸を打つ。

心身ともにボロボロながら、試合後には、大坂の心を気づかった。「これは話すと長くなる」と、錦織なりに考えたようだ。「誰にでも起こる症状」とし、「自分もメンタルの先生についている」と告白した。そして、「すごい救われたことがある」と、体験談からカウンセリングの重要性を説いた。

1回戦に勝った後に、「テニスはめんどくさい(スポーツ)」と錦織らしい言い回しで笑わせた。つまり、コート上では、コーチもアドバイスできず、「すべてを1人で決める」。どれだけ心が重要かを、錦織の言葉で説明していた。

次戦は、予選勝者で150位のラークソネンが相手だ。通常なら、勝機十分で、4大大会では19年ウィンブルドン以来の16強入りも見える。しかし、今は「とにかく何とかリカバリーしたい」と、戦える体に戻すことが先決だ。