全6戦とファイナルで世界一を争うシリーズが開幕し、18年平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(23=トヨタ自動車)が89・07点で2位発進した。今季公式戦初戦。ミスは出たものの納得の演技で、2季ぶりのGPで逆転優勝を狙える位置につけた。左肩痛を抱える佐藤駿(17=フジ・コーポレーション)は5位、世界選手権3連覇中のネーサン・チェン(22=米国)はまさかの4位と出遅れた。フリーは23日(日本時間24日)に行われる。

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本場の観客から歓声と拍手が宇野に降り注いだ。「歓声がある試合は久しぶりで、試合に戻ってきたんだな」と気持ちが高ぶる。冒頭の4回転フリップが2回転になってしまうミスこそ出たが、続く4回転-3回転の2連続トーループ、最後のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は成功。「これまでの自分なら、ミスが出た後は次の2本目を2回転にしてホッとしていたはず。今はそれがない」と立て直し「オーボエ協奏曲」を華麗に舞い切った。

この遠征で再会したランビエル・コーチと得点を聞くと、大きくうなずいた。コロナ禍で拠点のスイスに戻れず国内で調整したが「支えてくれる方が多くいるので練習は問題ない」。GP戦線は2季前のフランス杯で8位と成績も気持ちも沈んだが「今は、また世界のトップで戦える存在になりたいと心の中で強く火がともっている」と燃えた。

国際大会初戦で自然と向上心にも着火した。首位のジョウ(米国)と8・36点差で迎えるフリーへ。世界王者チェンは4位でも気が抜けない。4回転4種5本の高難度構成に挑むが、それでも足りない相手たちだ。

「僕は簡単な構成でもまとめられない。それならば限界まで難しい構成で失敗しても後れを取らないように…と思っていたけど、この大会に出たら自分の構成が一番難しいわけではないことを目の当たりにした」

4回転のフリップ、ループ、サルコー、トーループで勝負する宇野に対し、ジョウもチェンも佐藤もそれ以上の基礎点のルッツを跳ぶ。「本当に世界ってレベルが高いな、どんどん上がっているなと。素直にうれしい」と目を輝かせ、真剣勝負を喜んだ。【木下淳】