男子10メートル高飛び込みの玉井陸斗(15=JSS宝塚)と、女子シンクロ板飛び込みの金戸凜(18=セントラルスポーツ)三上紗也可(21=日体大)組がそろって銀メダルを獲得した。飛び込みの日本勢として歴代最高成績。玉井は決勝で488・00点を記録し、日本勢最年少メダルとなった。金戸、三上組は決勝で303・00点をマーク。今大会の日本勢は競泳、アーティスティックスイミングと合わせ、07年大会の過去最多に並ぶ13個のメダルを獲得した。

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玉井は最終6本目で鮮やかな入水を決め、95・40のハイスコアを出して逆転した。暫定トップに立つとテレビカメラに向けて投げキッスを放った。最終的には銀メダルだったが五輪、世界水泳を通じてこの種目では日本勢初の表彰台。日本勢最年少メダル獲得記録も更新した15歳は「理解できていないけど、めちゃくちゃうれしい」と喜んだ。

予選は3位通過。決勝2本目を終えて12人中8位だったが、3本目に大技の109C(前宙返り4回半抱え型)を成功させて首位に浮上した。その後4位に後退するも、最後の試技で得意の5255B(後ろ宙返り2回半2回半ひねりえび型)を決め、再び得点を伸ばした。圧倒的勢力を誇る中国勢の一角を崩し「勝てるはずのない存在だった。自信につながる」。銀メダルを獲得したのは日本時間4日未明。母美里さん45回目の誕生日に、両親は「母の誕生日に最高のプレゼントありがとう」と喜んだ。

練習拠点に高飛び込みの10メートル台はなく、コロナ禍で合宿に出向けなかった時期は板飛び込みに集中的に取り組んだ。板からの反発を得るために、週1回だった筋力トレーニングを3回に増やして強化。高さや回転のスピードが向上した。加えて健康促進のために幼少期から飲んできたヤクルトも「ヤクルト400」から「ヤクルト1000」へとグレードアップ。次々と年少記録を打ち立てている。

飛び込み競技で日本勢が最初に五輪に挑んだのは1920年アントワープ大会。100年以上が経過したが五輪メダルは1度もない。高校3年でパリ五輪へ向け、玉井は「金メダル目指して頑張りたい」。自信を胸に突き進む。

◆玉井陸斗(たまい・りくと)2006年(平18)9月11日、兵庫県宝塚市生まれ。3歳からJSS宝塚で水泳教室に通い、小1で飛び込みを始める。19年4月に日本室内選手権で、12歳7カ月の史上最年少優勝。中学3年で出場した21年東京五輪では、男子10メートル高飛び込みで日本選手として21年ぶり入賞を果たした。好きな食べ物は牛タン。家族は両親と兄。憧れは寺内健。身長155センチ。

〇…玉井は4月から兵庫・須磨学園高に通う。水泳部の谷川誠顧問(33)は玉井について「交友範囲が広く、社交的な性格。水泳部だけでなく、他の部活の友だちも多い」。宿題や課題なども遅れることなく提出しているそうで「学業とスポーツを両立させている」と目を細める。帰国後はすぐに全国高校総体の予選が始まるが「次は水泳部の仲間とともに出場する。頑張って欲しい」と期待を寄せた。