【ニューヨーク=吉松忠弘】今大会限りでの引退を示唆している4大大会23度の優勝を誇るセリーナ・ウィリアムズ(40=米国)が、ついに力尽きた。同46位のアイラ・トムリャノビッチ(29=オーストラリア)に5-7、7-6、1-6のフルセットで敗れた。

98年全豪で4大大会デビューを飾って以来、女子テニス界はセリーナの時代だった。その24年間で、姉ビーナス(42)とともに、ウィリアムズ姉妹は、女子テニスをパワフルなアスリートの戦いへと大きく変えた。

姉妹が登場した90年代後半まで、女子テニスは、男子に比べ、どこか優雅さを残していた。グラフ(ドイツ)、セレシュ(米国)ら、スピードを身につけた選手らもいたが、ごく一部だった。そこに、パワーという大きな武器を持ち込んだのが姉妹、特にセリーナだった。

姉妹の登場以降、女子も身体の大型化や、道具の発展で、サーブのスピードや破壊力が増した。特に妹のセリーナは、筋骨隆々としたマッスル系で、女子テニス界に革命をもたらした。この日敗れたトムリャノビッチも、その流れだ。180センチの長身で、この日の試合では、フォア、バックともに、セリーナの決定打数を上回った。

姉妹が、白人のテニス界に風穴を開けたと言われるが、実は、姉妹が登場する前に、すでに前兆はあった。95年最終世界ランキングで、姉ビーナスが205位。まだ姉妹の台頭は見られない。そのランキングで、トップ50に、15位のルビン(米国)、22位のガリソン(米国)、34位のマクニール(米国)と3人の黒人選手が名前を残している。その前任者が残した道を、姉妹は歩んでいったのだ。

姉妹は、カリフォルニア州の貧民街から誕生したヒロインのように扱われることが多い。確かに、父リチャードさんが、公営のテニスコートで姉妹を教え、そこからスタートしたテニス人生の物語は、映画にもなった。しかし、それほど派手ではないが、地道に道を切り開いてきた前任者がいなければ、姉妹の今もないかもしれない。

姉ビーナスは、まだ去就を明らかにしていない。ただ、現役を続けたとしても、以前のような切れ味鋭いプレーは、もう見られないかもしれない。セリーナがいなくなり、ビーナスが終えんを迎える女子テニス界で、歴史の女王を継承するのは誰なのか。新たなスターを、女子テニス界は待っている。

 

◆全米オープンテニスは、8月29日から9月12日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドとテニスワールドでも全コートでライブ配信される。