「もう1つの花園」こと第11回ラグビーU18合同チーム東西対抗戦が7日、東大阪市の花園ラグビー場で行われ、東北地区から3人が出場した。部員不足により単独校で15人制試合に出場できなかった選手で、昨夏の「KOBELCO CUP 2018第14回U18全国高校合同チームラグビー大会」の参加者から選出された。安積(福島)のプロップ小山師基、弘前学院聖愛(青森)のロック松宮龍太郎、大館桂桜(秋田)のフランカー目時隆聖(いずれも3年)が東軍のジャージーを身にまとい、「聖地」で夢をかなえた。【取材・構成=野上伸吾】
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夢にまで見た花園の第1グラウンドだった。「聖地」でのプレーは、ラグビーを愛し、努力を続けてきた高校ラガーマンたちにとって、最高のご褒美だった。大阪桐蔭対桐蔭学園戦の前座で行われた試合だったが、ラグビーにかけるひたむきな思いは、1時間45分後に決勝の舞台に立つ高校トップ選手たちにもひけをとらなかった。
2-5で迎えた前半24分だった。ラックからボールを持ち出した松宮が一時逆転となるトライを決めた。「観客のみなさんに見られて試合をすることなんて今までなかった。自分の強さを100%出せたトライ」と183センチ、97キロの興奮を抑えられなかった。
松宮は小1で弘前ラグビースクールで競技を始めた。弘前学院聖愛に進学すると、ラグビー部をつくってもらった。しかし部員は自分ただ1人。弘前市内だけで合同チームを組むことができず、青森市、五所川原市の5校が集まってなんとか試合をすることができた。「1、2年生の時のことを考えたら、花園でプレーできるなんて夢のまた夢。合同チームの僕は、自分1人の力で出られたわけじゃない。いろいろな人の思いを背負っている。本当に感謝したいです」と話した。受験はこれからだが、大学に進学してもラグビーを続けるつもりだ。自分たちの代が卒業すると、弘前市内の高校ラグビー部員は3人になる。「1人でも多くラグビーをしてくれたらうれしいです」と、花園で体感した思いを伝えていくつもりだ。
小山は176センチ、104キロの体格を生かし、プロップとして東軍のスクラムを支えた。持ち前の低いタックルも披露できた。「花園はラグビーをやっている人全てが目指す場所。自分がここに来られたことが信じられない。本当にうれしかった」。中学には卓球部しかなかったので卓球をやるしかなかった。安積入学後にラグビー部から熱烈な勧誘を受け、「必要とされている場所がある」と入部した。部員不足で合同チームでのプレーが多く苦労したが、逆にその経験で「周りの人への感謝を感じることができた」と話す。
県内有数の進学校らしく勉強にも手を抜かなかった。今後は受験勉強に専念し、教育系の国公立大学への進学を目指す。「志望の大学にはラグビー部がないので、クラブチームでラグビーを続けたい」。そしてさらに大きな夢を思い描いている。「花園はすごくいい経験になった。努力をすれば何らかの形で返ってくることがわかった。将来の夢は高校教師になって、そこでラグビーを教えて、監督としてまた花園に戻ってきたい」と、希望に満ちた表情で聖地を後にした。
フランカーの目時は後半開始から登場。逆転負けを喫したが、満足感でいっぱいだった。「今日は今までで考えられないほど緊張した。人が多くて歓声もすごかった。ワクワクしながら東軍のみんなで楽しんでプレーできた」と笑顔を見せた。ラグビーどころ秋田でも、ラグビー人口の減少は避けられない。目時も当初は単独チームでプレーしていたが、上級生が卒業してから同級生8人、下級生2人となり、大館鳳鳴との合同チームになった。「秋田では自分1人選んでもらった。みんなの代表だと思ってプレーした。本当に光栄でした」と周囲への感謝を忘れなかった。卒業後は東京の企業に就職する。「まずは仕事に慣れてから、いずれはどこかのクラブチームでプレーできたらと思っている」とラグビーは続けるつもりだ。「高校ラガーマンに夢と希望を与え、高校ラグビー全体の盛り上げに寄与する」ことを理念に掲げ始まった合同チーム東西対抗戦は、東北の3戦士たちにとって、かけがえのない経験となったはずだ。