再び歴史の扉をこじ開ける。ラグビー日本代表(世界ランキング7位)は20日、東京・味の素スタジアムで、W杯優勝2回の南アフリカ(同5位)との準々決勝に臨む。

1次リーグ4連勝で初の8強入りを果たしても、チームに緩みはない。19日は都内で最終調整し、リーチ・マイケル主将(31=東芝)を中心にリラックスムードで決戦に備えた。世界を驚かせ続ける桜の戦士が「走り勝つ」ラグビーで勝利をたぐり寄せる。

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小雨が降る中、軽やかにピッチに足を踏み入れたリーチは、ジョセフ・ヘッドコーチとがっちり握手し、小走りでチームの輪に合流した。約1時間の練習では時折笑顔を見せるなど、過度な緊張はなし。18日の公式会見で「誰も満足はしていない」と語った通り、手応えの中で、大一番前の最後の調整を終えた。

W杯2大会連続の主将。自国開催の重圧を、真っ向からはねのけてきた。3月に負った恥骨炎の影響もあり、開幕直後は本来のパフォーマンスではなかったが、痛みをごまかし、ここまで4試合すべてに出場。「毎回の試合が最後だと思って戦ってきた」と鬼のような形相で相手を追い、チームを鼓舞し続けてきた。

日本が初めて足を踏み入れた4強をかけた一戦で激突するのは、3度目の優勝を目指す南アフリカ。200センチ以上の選手を先発に3人並べ、世界屈指の強力FWを中心にゴリゴリ攻めてくるスター軍団に、開幕直前の壮行試合では7-41と大敗。実力の違いを見せつけられた。それでも、W杯開幕前の合宿で徹底的に鍛え上げ、リーチが「世界一」と自信を持つフィットネスを武器に、走り勝つラグビーで勝機を探る。

負ければ敗退が決まる一戦で、胸に刻むのは代表98キャップを誇る大野均(41=東芝)の言葉だ。所属先、日本代表で長く背中を追い続けてきた「鉄人」は、どんな相手でも全力でぶつかり、練習から常に100%で臨む。「均ちゃんの背中を見て、日本代表として戦うマインド、ネバーギブアップの精神を学んだ」とリーチ。胸に刻んできた思いは、日本が南アフリカを破る重要な鍵でもある。

開幕前にリーチは「以前、海外メディアから『日本の選手はどんな選手だ?』と聞かれた時、均ちゃんは『ゾンビみたいに、何をやっても立ち上がる』と真顔で言っていた。W杯のような究極の場面では、その姿勢が何より大事になる」と語っていた。

屈強な相手に倒されてもすぐに起き上がり、チームのためにまた体を張る。80分の我慢比べの先に、歴史的歓喜が待っている。大野のモットーは「灰になってもまだ燃えろ」-。桜の大黒柱が、その言葉の意味を体現する。【奥山将志】

◆決勝トーナメントの勝者決定方法 前後半各40分を終えて同点だった場合、10分ハーフの延長戦を実施。そこでも決着がつかなければ、10分1本の再延長戦を行う。再延長戦は先に得点を挙げたチームが勝利。それでも勝者が決まらない場合は「キッキング・コンペティション」を実施。蹴る場所を変えながら各チーム5人がゴールキックし、成功数が多い方が勝利。その後はサドンデス方式となる。台風など非常事態で試合開催不可能な場合は、原則2日以内に順延して行う。