<大相撲春場所>◇2日目◇15日◇大阪府立体育会館

 193センチ、143キロと横綱白鵬並みの体格を誇る石川・西南部中3年の達綾哉(たつ・りょうや、15=高田川)が、プロ初戦となった前相撲で豪快に白星発進した。昨年の全国都道府県中学生選手権の団体と個人を制した逸材。元横綱輪島の遠縁という期待の星は、「達」のしこ名で原と対戦。突き押し5発、わずか2秒足らずで鮮烈なデビューを飾った。

 1人だけ、明らかにレベルが違う。達は立ち合いから左右の腕を交互に突き出し、5発で勝負あり。「緊張しました。いい相撲が取れてよかったです」と初々しく振り返った。土俵下に吹っ飛ばされた同じ15歳の原は「強烈でした。組むこともできず、残念でした」と悔しがった。

 6日の新弟子検査は193センチ、145キロで難なく通過。環境の変化には「もう慣れました」と話したが、体重が2キロ減ったという。石川から車を運転し、徹夜で駆けつけた父一幸さん(40)は「あれくらいは取ってくれると思っていた。正直、勝ってくれてうれしい」と胸をなで下ろした。

 目標の力士は、父方の遠戚(えんせき)にあたる元横綱輪島。数日前に電話で励まされたという達は、尊敬する点について「体は小さいけど相撲はとてもうまい」と指摘。現役時代は186センチ、132キロの先輩すら「小さい」と言う大物感も漂わせた。達も目標は横綱で、関取は「3年以内」という。日本人横綱待望論が強い角界に、期待の新星誕生だ。

 師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)は「しょせん、前相撲は子どもの相撲」と厳しく言いつつ、期待も示した。「突き押しができるから、出世は早いかもしれない。今も三段目くらいの実力はあるが、これから本人がどうするかが大事」と説明した。

 父は187センチ。生まれた時は普通だった達も、幼稚園では「これ以上大きくなったら、制服がなくなる」と言われ、最大サイズをピチピチに着た。小1から相撲を始め、中1で183センチ、108キロに成長。今も1日10合のご飯をたいらげる。靴は、通販でしか買えない32センチ。元横綱朝青龍関について「とっても強いけど、問題が多い。引退は残念」と話す。規格外の男が暴れるべき舞台は、まだ上に残されているはず。今後も逸話を残し続けていけるかどうかは、これからにかかっている。【佐々木一郎】