人気沸騰-。いま、鳴尾浜球場が熱い。入れ物(球場)が小さい。観客動員数が最大“500人”で満席。すぐ満員になって当然。大騒ぎするほどの出来事ではないかもしれないが、公共交通機関を利用して球場通いしようと思ったら、場所が海の埋め立て地。電車-バスを乗り継がないと行けない不便なロケーション。私も同じ西宮市に在住。いつもは自家用車で通っているので約40分前後で行けるが、公共交通機関を利用した場合は1時間半から2時間を要する。にもかかわらず、今年は連日多くの阪神ファンが詰めかける盛況ぶり。チームとしてはうれしい悲鳴。24日現在11試合を消化しているが、うち、7試合が満員札止め。昨シーズンの41試合で9試合と比較すると大差である。その根拠は……。
まず考えられるのは若手の台頭だ。現在も1軍で頑張っている江越、横田、北條、陽川ら、これまでファームで力をつけてきた若い選手が、キャンプでさらに成長した。そこへ、キャンプは2軍で鍛えていた注目の新人高山が桧(ひのき)舞台で活躍。金本監督の手腕のひとつだろうが、要するに若手への期待が大いにふくらんだことで、ファンの足が鳴尾浜に向いているのだ。大阪在住の男性ファンに聞いてみると「1軍で若い人が活躍しているのが刺激になって、ここにいる選手も『やればできる』の希望を持ったはず。楽しみですね。まあ、掛布監督になったことだし、掛布2世を育ててほしいね」と玄人はだしの評価をしていたが、さらなる若手の成長を楽しみにしているようだ。
掛布人気も後押ししている。昨年このコーナーの最終盤で監督問題に触れ、私が某テレビに出演したときの「OBも含めて、一番印象に残る選手」の投票があったことを明記し、やはりトップだったことを紹介したが、阪神ファンの掛布待望論はハンパではない。現在1軍で活躍している若手は、いわゆる“掛布チルドレン”。鳴尾浜人気の担い手だが、この現象を一番喜んでいるのは監督本人。それは「ファンは選手を育てる」の持論の持ち主だからだ。ファンサービスも旺盛だ。同球場での開幕戦では“監督カード(選手もあり)”と称する、今季球団が作成した本人を紹介するカードの写真500枚に、直筆のサインをして来場したファンに配布した。一口に500枚というが大変な作業だし、チーム初勝利のオリックス戦では、ウイニングボールにその場でサインして、スタンドに投げ入れた。
スターだったからこそできるファンサービスかもしれないが、先ほど少々触れたように「僕はファンの人も選手を育ててくれると思っているんですよ。たくさんのお客さんの厳しい目があれば、ヘタなことはできません。だからゲームに集中できますし、勝負を途中で諦めるわけにはいきません。集中力は若い選手の成長にもつながりますので、お客さんが1人でも多く来てくれるのはありがたいです。この前、ソフトバンクの水上監督が言っていました。『今年の鳴尾浜はずいぶん盛り上がっていますねえ。戦っていて昨年までの雰囲気と全然違うのを感じました』と。いい傾向です」は掛布監督。ファンの目を意識してのことだが、独立リーグや、アマチュアとの交流戦もどんどん組んでいく予定だ。
多数のファンが来場してくれるのは選手の励みになっているのは確か。現在、育成選手ながら打線の中軸“4番”に抜てきされている原口文仁選手は「今年はお客さんがよく入ってくれています。グラウンドから見ていてもよくわかります。やはりお客さんが多いと緊張感は保てますし、ミスはできませんのでプレーに集中できますので、いいムードの中で試合をしています」と支配下登録に勝負をかけている。
ユニホーム組は大歓迎しているが、球団は来場者を歓迎しながらも大変な対応に追われている。鳴尾浜球場が新設されて今年で20年強になる。いまだ入場料は無料。これもファンサービスの一環だが、同球場の観客動員数は500人と消防法で定められている。入り口で入場者をチェック。満員になったところでストップをかけるわけだが、札止めになったからといってそのまま帰ってくれるファンはいない。当初は数人だったファンは時間がたつにつれ10人、20人と膨らんでくる。だからといって球場にまで足を運んでくれた人をむげにはできない。2軍戦の試合管理人・浅井智文営業部興行担当課長は「途中で帰られる人が結構いますので、その数だけ順番に入っていただいています」と気配りをしながらの対応を余儀なくされているが、球団としては一番大事なファン獲得に欠かせない仕事だけに大変だ。
【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)



