やはり窮地を救ったのは、この男だ。楽天嶋基宏捕手(31)が延長12回2死一、二塁から左翼越えにサヨナラ打を放った。6回には今季1号の同点ソロも打っており、チームの連敗を6で止め、最下位転落も阻止する大活躍。ヒーローインタビューでは熊本の被災者に向け激励の言葉を送った。東日本大震災の時にも東北の被災者を勇気づける言葉を送ったが、熱い気持ちがバットに乗り移っていた。
嶋はお立ち台で、ヒーローインタビューの最後に語調を変えた。スタンドのファン、テレビの前の視聴者に心から語りかけるように話し始めた。「話は変わりますが、5年前。ここにいる人たちもそうだけど、震災が起きてたくさんの人に支えられました。今、熊本で困っている人がいっぱいいます。少しでも力になれるよう、温かい気持ちを送って、日本を盛り上げていきましょう」と訴えた。
熱い気持ちが最後の打席に凝縮されていた。被災者への思いだけではない。チームも危機的状況に陥っていた。「(松井)稼頭央さんが必死になって出てくれて。中継ぎ陣が必死に抑えてくれて。ここで決めなきゃ男じゃないと」。3-0から打ちに行った。詰まってあわや一邪飛かと思われたがスタンドに入って助かった。打ちたい、決めたい思いが強かったのだろう。次の5球目、バットを折りながらも左翼フェンス手前まで運んだ。
梨田監督も、4球目のファウルがサヨナラを生んだと見ていた。「どん詰まりだったけど1回振ったからね。あーいう当たりが出た。ムードをガラッと変えてくれるサヨナラヒットでした」。連敗が続いていても泰然としていた。試合前には嶋ら野手に「開幕のつもりでやろう」と語りかけていた。嶋は、監督のその思いにも応えた。一塁ベースを回った後、歓声でヒットと分かった。遊撃付近で倒れ込んだ。ナインにドッと囲まれ共に喜びを分かち合った。
試合終了後には、選手会長の銀次の音頭で募金を行った。球場正面に1軍登録選手がそろった。嶋もファンとハイタッチをしながら気持ちをひとつにした。「次は逆に僕たちが少しでもできることをやっていきたいという気持ちです。11時を回ってもこんなにも多くの人たちが、熊本の人々に対する気持ちで集まってくれた」と感激。野球でもピンチの後にはチャンスが来る。楽天も巻き返しは、これからだ。【矢後洋一】



