<パCS第2ステージ:西武9-0日本ハム>◇第5戦◇22日◇西武ドーム
これがエースだ。西武が9-0で日本ハムに勝ち、4年ぶり21度目の日本シリーズ進出を決めた。先発の涌井秀章投手(22)が7回2死までパーフェクト、プレーオフとCS史上最少タイの被安打3で完封した。リーグ戦は不本意な10勝に終わったが、今ステージ2戦2勝で本領を発揮しMVPを獲得した。11月1日から巨人、中日の勝者と日本一をかけて対戦する。
今年の涌井からは想像できない快投だった。7回2死まで1人の走者も許さない。大記録の予感に、西武ドームが異様な雰囲気に包まれた。69球目。日本ハム稲葉の放ったライナーが左前に落ちた。打球の行方を見届けた涌井はポーカーフェースを崩さない。「ベンチで平尾さんとかに言われてました。打たれるだろうなとは思ってたんで」。初めて安打を許しても平常心で、最後まで投げきった。
9回に2安打され、最後だけは意地になった。稲葉との再戦で、今季最速148キロをこの打席だけで4度もマーク。「今日は球速が出てたので、間違って振っちゃったんじゃないですか」。初めての全力投球で空振り三振をとり、最後の打者にした。余力十分の3安打無四球完封。今年1年の悔しさをすべてぶつけ、プロ4年目の大舞台で最高の投球をやってのけた。
マジック1で迎えた9月24日ロッテ戦では4回途中7失点と自滅。本拠地でぶざまな姿をさらけ出した。昨季17勝の最多勝右腕が、今季は10勝11敗。期待を何度も裏切ったにもかかわらず、CS第2ステージの開幕投手に指名された。岸、帆足、石井一と並ぶ先発陣でもっとも成績が悪かっただけに「我慢して使ってもらった監督に感謝したいです」。CSで2戦2勝とエースの役割を完ぺきに果たし、渡辺監督を男にした。
大舞台ほど力を発揮する。横浜高時代に甲子園準優勝、国体優勝。今年8月の北京五輪では2戦2勝。日本シリーズで敵地7連勝の記録を持つ渡辺監督は「短期決戦ではバリバリ燃える。おれと似てる」と一発勝負の強さにかけた。ちょうど17年前のこの日。91年10月22日に、広島との日本シリーズ第3戦で1-0の完封勝利を挙げた。プロで初めて負け越した8年目のシーズンを短期決戦で取り返した姿と、この日の涌井は重なって見えた。
親友ダルビッシュに出番を与えなかった。「ダルの奥さんから、有くんに投げさせてあげてってメールがきました。西武を応援しとけって返しました」。最終戦で登板予定だったライバルの前で完全復活した。4年ぶりの日本シリーズ進出。未経験の涌井は「今日と同じような投球ができればいいと思います」。最も大事な時期に、本来のエースが帰ってきた。【柴田猛夫】



