<横浜0-2中日>◇3日◇横浜

 中日チェン・ウェイン投手(23)がチームの最下位転落の危機を救った。横浜打線を力でねじ伏せ、6回までパーフェクト。7回先頭石川に左前打を許し大記録は幻となったが、5安打完封で今季2勝目を挙げるとともに、チームの連敗を4で止めた。防御率も1・22とし、セ・リーグトップに浮上。ひと皮むけた剛球左腕が、巻き返しへの旗手となる。

 絶体絶命のピンチで、チェンの闘争本能に火が付いた。9回裏1死一、三塁。リードは2点。6番吉村には真っ向からの力勝負だ。初球空振りの後、4球ファウル。初回に記録したこの日最速の152キロに迫る151キロの剛球で押した。ボールカウント2-1からの7球目、最後はフォークを引っかけさせた。遊ゴロ併殺打に打ち取ると、両手を思い切り振り下ろし、雄たけびをあげた。昨年9月22日ヤクルト戦(ナゴヤドーム)以来となる自身2度目の完封勝ちだった。

 チェン

 腕を振って、下半身を使って投げようとした。完封はうれしいです。最後は1点取られてもしようがないと開き直った。

 6回まで完全。右打者のインコースに150キロのストレートを迷いなく投げ込んだ。5三振のうち4個が見逃し。打者をぼうぜんと見送らせた。「高めのインコースを厳しく。低めにいかないようにした」。球威を効果的に使うための工夫だった。

 7回先頭の石川に左前打を浴び、完全試合もノーヒットノーランも幻となったが「意識していない」とうろたえなかった。この回2死一、二塁。8回も無死一、三塁から2死満塁という大ピンチをつくったが気迫で踏ん張った。

 先発で投げられることがうれしい。一昨年は右ひじ手術からのリハビリに明け暮れ、契約も育成枠だった。昨年は中継ぎを経験し、常に100%の力を出さなければならない修羅場でもまれた。開幕から先発ローテ入りした今季も、当時の思いを忘れたことはない。試合前練習では近藤投手コーチ相手のキャッチボールで、下半身主導の投げ方を徹底チェック。投手陣に飲み物を渡すドリンク係も率先してこなし、毎試合のように荷物を引いてグラウンドに向かう。手を抜いたことがない。

 落合監督は、あえて岩瀬を温存してチェンを完封させた。8回終了時で球数は100球。「そこに(チェンが)いるからそいつに聞いてくれ」と説明を控えたが、優勝争いが大詰めとなる9月なら2点リードの9回には迷わず守護神を投入するはず。4試合連続でリリーフを仰いできた若手左腕に、あえて試練を与えて一皮むけさせた。

 負ければ04年5月11日以来の最下位に転落していたが、ひとまず危機を脱した。泥沼の連敗も4でストップ。本来のチーム力が戻ったわけではないが、光明が見えた。「まだ始まったばかりなので、がんばっていきたいです」。チェンが5月反攻を宣言した。【村野

 森】

 [2009年5月4日11時39分

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