<横浜4-3中日>◇8日◇横浜

 ミスタードラゴンズだ!背番号3永久欠番へ-中日立浪和義内野手(39)が長嶋茂雄氏(73=巨人軍終身名誉監督)の記録を抜いた。8日の横浜14回戦(横浜)の9回、代打で右越え同点二塁打を放ち、今季13安打目で通算2472安打とし、長嶋氏を抜いて日本球界歴代7位となった。功績を称えるため、球団は立浪の背番号3を永久欠番とするための検討会議を行うことが明らかになった。

 立浪は足踏みすることなく「ミスター・プロ野球」を超えていった。2-3と1点を追う9回1死二塁。代打の切り札に出番がやってきた。カウント1-1、横浜の守護神山口の直球をとらえた。打球は横浜ファンの悲鳴とともにぐんぐん伸びて右翼フェンスを直撃。起死回生の同点適時二塁打は長嶋氏を抜いて通算安打数歴代単独7位となる2472安打目だった。

 「(記録は)光栄なことだけど個人の記録は置いておいてチームが大事な時期だから」。延長11回にサヨナラ負けしたこともあり、試合後は記録のことはほとんど触れなかった。

 それでもこの日、ゲーム序盤からベンチ前で相手投手とのタイミングをはかりながら素振りを繰り返す立浪の姿があった。本人が「早い回から準備して気合が入っていた」と言うように、いつもより準備に繰り出すタイミングは早かった。一時代を築いた偉大な野球人への敬意の表れだったのかもしれない。

 年の差はじつに34歳。長嶋氏の現役時代は知らないが、宿敵・巨人の監督としては生涯忘れない試合を戦った。1994年10月8日、ナゴヤ球場。並んでいた巨人と中日はシーズン最終戦で優勝をかけて戦った。劣勢の7回、立浪は一塁へ執念のヘッドスライディングを敢行して肩を脱臼した。「ケガをしてしまったけど、あの試合を経験できたことはその後ですごく大きかった」。ミスターとの激闘がその後の野球人生の財産となった。

 長嶋氏に並ぶ2471安打目を放った翌日、立浪は新聞紙上でミスターから寄せられたコメントを見た。「ああいうすごい方にコメントをいただけただけでも光栄なこと」と恐縮しながらも前を見据えて言った。「ただ今年は良くても、悪くても後ろを振り返らないようにしている。これから先何本打てるかはわかりませんが、1本ずつ積み重ねていきたい」。

 福本、衣笠、門田、王、野村、そして張本。上にはあと6人しかいない。ただ、今季限りでの引退を決めているミスター・ドラゴンズにとっては今、その瞬間こそが最も大事なもの。残りわずかな限られた打席の中で完全燃焼するだけだ。【鈴木忠平】

 [2009年8月9日12時13分

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