来季は50盗塁でタイトル奪回だ-。中日荒木雅博内野手(32)が19日、名古屋市内の東海テレビで「ドラHOT」に出演し、故障で今季限りでの現役引退を余儀なくされた阪神赤星憲広外野手(33)との約束を果たすべく、自己最高の50盗塁で3年ぶり盗塁王を獲得することを宣言。そのために今季は井端に譲っていた1番打者の座も奪い返すことを誓った。

 あえて宣言した。「来年は50盗塁で盗塁王を取ります」-。荒木は2010年シーズンの抱負を聞かれると迷わず答えた。目指すは自己最高となる50個。壮大な目標を掲げた裏には今シーズン、果たせなかった思いがある。

 今季、開幕前に左足を痛めた荒木は5月半ばまで盗塁を封印した。足が治った5月からスパートをかけた。阪神赤星、ヤクルト福地との争い。すると9月、首の故障で戦線離脱した1歳上の赤星から携帯電話にメールが届いた。「あとは任せた」-。ここ数年、毎年タイトルを争ってきたライバルであり、尊敬する男からの“盗塁王指令”だった。荒木は気持ちを奮い立たせて必死に戦ったが、終盤戦では左手首を痛めて欠場せざるを得なかった。これが響いて37盗塁に終わり、ヤクルト福地に5個差で敗れた。赤星との約束は果たせなかった。

 そして今月、赤星引退を知った荒木が「お疲れさまでした。寂しいですけど、体を大事にしてください」とメールすると、赤星は「ありがとう。お前は頑張ってくれ」と返してくれた。通算381盗塁、盗塁王に5度も輝いた偉大なライバルが去った後、タイトルを獲得するのは自分でなくてはならない。50盗塁を宣言した裏にはそんな思いがあったに違いない。

 また07年以来、3年ぶりタイトル奪回にはまず1番の座を奪回することが必要となる。「1番を打ちたい。何とか奪い返したい。やはり1番を打たないと走るチャンスも少ないですから」。今季は開幕こそ1番を打ったが、5月からは1番井端、2番荒木で固定された。制約の多い2番では当然、盗塁のチャンスも限られてくる。

 来季の打順は落合監督の構想次第だが、首位打者をうかがう井端から1番を奪回するのは並大抵ではない。ただ、荒木はこの年末からバットを振り始める計画だ。「打率2割7分は胸を張れる数字ではない。いつもスタートが悪いので来年は始動を早くしたい。出塁率を上げれば盗塁にもつながる」。もうプロのグラウンドに立てない赤星の思いも背負って、来季の荒木は走りまくる。【鈴木忠平】

 [2009年12月20日11時58分

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