<阪神6-7巨人>◇13日◇甲子園

 負けてなお猛虎強し、を宿敵に印象付けた。その象徴が、火の玉ストレート全開で巨人打線をねじ伏せた守護神・藤川球児投手(29)だ。首位攻防第1ラウンド。4-4の9回、高橋由のライナーを左翼藤川俊が好捕したかに見えたが判定は無情のワンバウンド、ヒット。だがこの「誤審」にめげず、無死二、三塁の大ピンチを球児は魂の17球で切り抜けた。5月2日以来の首位奪取に失敗、ゲーム差は1・5差となったが、接戦になれば球児がいる。14日以降の2試合で悔しさをぶつけ、やり返す!

 勝利にはつながらなかったが、絶対的な存在感を宿敵に見せつけた。激戦に敗れたが、藤川は淡々と前を向いて言った。「まだ、8試合ありますから、8試合ありますから」。2度同じ繰り返し、フル回転を誓った。9連戦は始まったばかり。天王山もあと2戦ある。14日以降、2連勝なら再び首位。やられたら、やり返す。打倒巨人に燃える守護神がチームの思いを代弁した。

 「ハンデ戦」にも動じなかった。セ界の頂点を賭け、0・5ゲーム差の間しのぎを削った死闘は、9回に入っても4-4のこう着状態。それだけで血が騒ぐようなシチュエーションだが、これ以上の極地を「野球の神様」は用意していた。ぱらつく小雨。先頭工藤への3球目、絶対的守護神の手元が狂った。いきなりの死球。さらに「事件」が待っていた。

 高橋への内角高めの直球はライナーで左翼へ飛んだ。守備固めに入っていた藤川俊が俊足を飛ばしスライディングキャッチを試みる。地面にグラブを滑らせながらすくい取った--かに見えた。だが、三塁塁審笠原の両手は大きく開いた。現場を間近で見ていた新井が、審判に詰め寄ると、すかさず真弓監督もベンチから飛び出した。甲子園が騒然とした。1死一塁と、無死一、二塁では大違いだ。それでも、守護神は冷静だった。

 「俊介が前に出て、一、三塁になるところを、一、二塁で止めてくれた」。スイッチを入れた。坂本への初球フォークが暴投になり、無死二、三塁と絶体絶命のピンチだ。暴投も許されない場面。だが臆(おく)するなくフォークを連投。一邪飛に打ち取り、1個目のアウトを奪った。

 松本を最後は153キロの火の玉で三振。あと1人。城島が勝負の打者を迷ったが、藤川はベンチに小笠原との真っ向勝負を主張し、そして勝った。4球連続の直球で追い込み、最後は最速154キロの直球で空振り三振。任務完了した守護神は右手を握り、足早にベンチに戻った。

 厳しい9回無死二、三塁、巨人のうるさい3人を0点に抑えた。リードして守護神につなげば、巨人は倒せる。「まだ8試合ある」。絶対的守護神が、今後も接戦になるだろう、伝統の一戦に、はっきりとした「道」を記した。

 [2010年7月14日12時29分

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