<オールスターゲーム:全パ4-3全セ>◇第2戦◇23日◇QVCマリン

 全パの4番、西武中村剛也内野手(27)が2打席連発だ。1回にヤクルト館山から左翼席最上段に135メートル弾。4回には中日吉見からバックスクリーンに125メートル弾を打ち込んだ。シーズン前半戦26本塁打を放ち、飛ばないとされる統一球導入元年に打ちまくる中村に、球宴出場のスターたちからも驚嘆の声が上がった。中村は初のMVPも獲得した。通算成績は全パの76勝71敗9分け。第3戦は今日24日、東日本大震災の復興支援として、Kスタ宮城で行われる。

 飛ばないといわれる統一球など、どこ吹く風。球界全体で本塁打数が減り、それを見る楽しみも薄れゆくなか、中村の打球には夢があふれていた。左翼席最上段への先制2ラン、2打席連発のソロはバックスクリーンへ一直線。代名詞の“おかわり弾”でファンも選手も喜ばせ、文句なしのMVPに輝いた。

 お祭り舞台で、フルスイングを解禁した。十分力強く見えるシーズン中のスイングは、実は100%で振っていない。「今日は三振か、ホームランか。全打席、全球フルスイングで狙いました。なかなかシンに当たることはないんで」と胸を張った。振り切った反動で、何度もバランスを崩したほど。普段は確率が下がるため「軽く振るようにしている」。8~9割の力でも、102キロの体重をしっかり打球に乗せることで飛距離を出している。

 両親の一貫した教えが根底にある。少年野球の指導者だった父重一さん(59)は「小さいころからホームランを打てるバッターになれ、としか言わなかった。とにかくフォロースルーを大きくするように、ティー打撃をたくさんやった。遠くに飛ばすのは、体重がないと打てない。体形を変えさせようと思ったことは1度もない」と振り返る。

 4296グラムで生まれた。体重は増え、年齢に比例しない重さで3輪車を破壊したこともある。小学生のころ、保健の先生から太りすぎを注意された。母久美さん(56)は「うちはうちの教育方針があります。口出ししないでください」とつっぱねた。いちずな頑固さは、中村にも引き継がれている。

 幼少から“維持”してきたポッチャリ体形に秘めたパワーだけでなく、技術面でも進化を続ける。6月に死球を受け、左手の甲がはれた。バットを軽く握る程度しかできず、試行錯誤し「右手でボールを押し込む感覚がわかった」。親指と人さし指の水かき部分を強く前に押し出し、ボールに力を伝えることでアーチを量産。けがの功名もあり、積み重ねた今季26発は他の追随を許さない。

 「中村のスイングはすごかったな、と少しでも思ってもらえたらいいですね」。珍しくガッツポーズをつくった。視線の先にスタンド観戦した長男がいた。前日22日が誕生日で、2歳になったばかり。顔が似てきたわが子に、1日遅れの祝砲をプレゼントした。遠征続きで、久々に再会した麻里恵夫人は、試合前にそっと栄養ドリンク・ユンケルを渡してくれた。夢の球宴にふさわしい放物線は、家族の力でさらに飛距離が伸びた。【柴田猛夫】