<巨人2-0阪神>◇8日◇東京ドーム
代名詞を捨て、力強い打球を手に入れた。巨人松本哲也外野手(28)が6回1死一塁、決勝の適時二塁打を放った。てんびん打法でブレークし、09年には新人王を獲得。が、統一球の対応に苦しみ、この2シーズンはファーム暮らしが長かった。新フォームを模索し、長打で重い展開に風穴をあけた。8回の守備では中堅フェンスに激突しながら好捕。苦労が実を結びお立ち台で号泣した。チームは4年ぶりに阪神戦の勝ち越しを決めた。
涙が止まらなかった。お立ち台で、松本哲は「悔しい部分はあったけど何とか我慢して、期待に応えようとやってました」と振り返ると、家族の話題を振られた。オフに結婚した朝美夫人の「絶対大丈夫だよ」との言葉や、6月に誕生した長女の顔が頭をよぎる。「支えてもらったので結果を出せて良かったです」。いつも笑顔で苦労を感じさせない男が、大歓声の中、人目もはばからず泣いた。
思いがぎっしり詰まった、決勝の二塁打だった。松本哲といえば、両手の間隔を離してリラックスした状態で構える「てんびん打法」が代名詞。だが昨年導入の統一球で、とらえたはずの打球がファウルになった。「押される感覚があって。前で打つために1工程、減らしました」。今年5月。慣れ親しんだ打撃フォーム変更を決意。「個性より結果が大事。とにかくヒットが欲しいんです」。1本足をすり足にし、バットを握り直す動作もなくした。
その成果が、この日2本目の長打となった。6回1死一塁。カウントは3ボール1ストライクで、一塁走者長野がスタート。第2打席も同じ状況で、高めボール球を強振し併殺打を放っていた。「ボールを見極めて、何とか強い打球を打とうとした」。両手でしっかり握って構えたバットを、阪神久保の135キロめがけて上から思い切りたたきつけた。右中間への鋭い弾道は、均衡を破る決勝の適時二塁打となった。
大技が出れば、自慢の小技もさらにさえる。適時二塁打の打席では、2球目までバントの構えも見せて相手を揺さぶった。8回には新井良の大飛球をフェンス際でジャンプし、体をぶつけながら好捕。「先頭だったし、捕る捕らないで全然違う。フェンスは見えてました」と涼しげに振り返った。
打って、守ってと躍動した168センチの小兵を、原監督も「このところ非常にらしさが出ている。守備もスーパープレーだった。続けてほしいね」と評価した。09年新人王が、輝きを取り戻した。【浜本卓也】



