<中日6-6ソフトバンク>◇8日◇ナゴヤドーム

 救世主になれ!

 中日ドラフト1位の福谷浩司投手(22=慶大)が100満点の1軍デビューを飾った。ソフトバンク戦の6回から登板し、1イニングを無失点。最速150キロをマークするなど持ち味の直球で押しまくった。9回に追いつき、延長12回ドロー。投手陣が故障者に泣き、疲労が蓄積される中、遅れてきたルーキーが新風が吹き込んだ。

 「ピッチャー、福谷」のコールにナゴヤドームがどよめいた。背番号24をつけたドラ1右腕がついに1軍マウンドに上がった。6回から登板し、1イニングを無失点と強烈なインパクト。しかも、インテリらしからぬ気持ちを前面に出したパワフルな投球に、3万6000人で埋まったスタンドも沸いた。

 いきなり強気だった。先頭の今宮を143キロ直球で空振り三振に仕留めると、続く山崎も145キロ直球で一ゴロ。最後は代打松中を145キロ直球で二ゴロ。この日の最速は2度計測した150キロ。打者3人に投じた11球中、変化球はスライダー2球だけ。真っ向勝負だった。

 前日7日に今中投手コーチが「博士はいらんよ。あそこでやってくれたら何でもいい。抑えてくれたらいい」とコメント。学歴不問のプロの世界で結果を求めた。相手をにらみつけるような面構え。闘志むき出しの直球。まさに期待通りだった。

 入寮時から“福谷伝説”と呼ばれる逸話を残してきた。最近のルーキーたちはパソコンを携えて入寮する。通常なら部屋にインターネットを引くために業者に頼むところを福谷は1人で設置した。しかも、訪れた業者に簡単な設置方法をレクチャー。「あんなプロ野球選手見たことない」と驚かれたほどだ。

 「声援は緊張したけど、今中コーチから『打たれてもいい』と言われて、踏ん切りがついた。ここで投げる意味を考えて投げた」。クールな頭と熱いハートをあわせ持つ22歳。守道竜の大きな武器になるかもしれない。【桝井聡】

 ◆福谷浩司(ふくたに・こうじ)1991年(平3)1月9日、愛知県知多市生まれ。横須賀ではエースで4番。3年夏の東愛知大会は初戦敗退。AO入試で慶大理工学部に進学。1年秋に東京6大学リーグデビュー。3年春は抑えで12試合に登板し、最優秀防御率(0・59)タイトルを獲得。今季のウエスタン・リーグは6試合0勝0敗。183センチ、90キロ。右投げ右打ち。