<阪神2-0ヤクルト>◇23日◇甲子園

 待ってろ巨人、秋大好きの大男が仁王立ちだ。8年連続V逸から一夜明けた阪神が、3年ぶりクライマックスシリーズ進出を決めた。ランディ・メッセンジャー投手(32)が3安打、三塁も踏ませない完封で約1カ月ぶりの12勝目。今季の3位以上を確定させ、巨人へ雪辱する道を切り開いた。奪三振レースも独走の助っ人はシーズンが深まるほど力を発揮するミスター・オータム。タイトルもCS進撃も根こそぎじゃー。

 たまらず、捕手の清水を抱き上げた。メッセンジャーが1カ月ぶりの白星に酔いしれた。前日、優勝を逃したばかりで、3年ぶりのCS進出を決める1勝をもぎ取った。クラブハウスへの通路ではヒーロー賞のトラッキー人形と長男ロームくんを抱え、終始ご機嫌でインタビューを受けた。

 「今までの自分の投球内容を見ても、1点あれば十分と思っていた。2点は大きかったですね」

 わずか2点のリードでも、全く危なげがなかった。前回登板では7回で150球も要した反省を生かした。カーブを効果的に使って緩急自在。四球は与えず、わずか3安打。ヤクルト打線の早打ちにも助けられ、116球で9回を投げきった。試合前にはリリーフ陣に「今日は休んでいて」と大見得を切り、有言実行。連日の長時間試合で疲弊していた救援陣にも救いの投球だった。6三振も奪い、すでに独走状態の奪三振王争いで、2位の広島前田健に20個差をつけた。

 9月に入ってようやくの初勝利だが、実は4試合31イニングでわずかに1失点。防御率0・29と驚異の安定感だ。昨季も9月以降は4勝1敗と、シーズン終盤に強い秋男。その原点が、マーリンズでメジャーデビューした05年にある。当時25歳の若手右腕は、ベテラン投手陣に心酔した。

 「シーズンはどうやってスタートするかより、どうやってフィニッシュするかの方が大事なんだ。最後にいいイメージをつくることが大切だよ」。現在も球界のエースのA・J・バーネットや、10年連続2ケタ勝利のアル・ライター。通算319セーブのトッド・ジョーンズら大御所が口をそろえた。メッセンジャーは「今もその教えが、自分の中にある」と振り返る。

 開幕当初は防御率も4点台。7月に月間MVPを受賞するなど、上昇カーブがどこまでも伸びる。シーズン中に模索しながら最後にベストの状態をつくる術がある。

 助っ人の快投で、V逸に落ち込むことなくCS進出を決めた。中西投手コーチも「逆算したら、どこで使うかやな。最後のとりででもいいな。とりで、とりで、でいけるからな」と大車輪の役割をにおわせた。描くシナリオは、突破がかかるファーストステージ(S)3戦目から、ファイナルSで王手をかけられた試合への投入か。失意から奮い立つ虎には、秋男がいる。<メッセンジャー記録メモ>

 ◆最多奪三振の初タイトル確実

 現在171で、2位前田健(広島)151に20個差。阪神では昨季能見が獲得し、助っ人では初。助っ人で投手3冠部門は64年最多勝、最優秀防御率のバッキー以来2人目。

 ◆2度目の12勝

 12勝到達は11年12勝に次ぎ2度目。阪神助っ人では5度のバッキー(64~68年)、2度のキーオ(88、89年)に続き3人目。

 ◆シーズン3完封

 完封勝利シーズン3度は06年井川3度以来チーム7年ぶり。助っ人では68年バッキー3度以来45年ぶり。