オリックスから国内フリーエージェント(FA)宣言した金子千尋投手(31)が25日、近日中に右肘の遊離軟骨除去手術を受けることを明かした。球団が関西官財界関係者を招き、大阪市内で行われた「応援感謝の会」に参加。この日神戸市内の病院で精密検査を受け、手術が最善と診断されたことを公表した。国内他球団が獲得に名乗りを上げるFA交渉期間の真っただ中での異例の発表だが、故障をオープンにして交渉に臨みたいもようだ。

 「金子選手からお知らせがあります」。オリックスの球団広報が突然、報道陣を集めた。渦中のFA右腕が参加していた大阪市内ホテルの会合会場。24日に今オフのポスティング断念を公表したばかりだが、2日続けて進路に関する重大発表か。だが表情硬く登場した金子の口をついたのは、まさかの手術報告だった。

 金子

 今日CTを撮ってもらうと、邪魔している右肘の遊離軟骨が違和感の原因と言われました。でも複雑な場所にあるわけでなく、早く手術した方が早期復帰が可能ということで、そういうことになりました。

 金子によると23日に球団の健康診断を受診後、自宅で服を着替えた際に違和感を覚えたという。そのまま参加した24日のファン感謝デーをはさみ、この日神戸市内の病院で精密検査を受診。11年2月に1回目の遊離軟骨除去手術を受けている金子にとって、ほぼ同じ症状で診断も予想した通りだったという。そして気になる故障の程度については“軽症”を強調した。

 金子

 前回もクリーニング手術をしていますし、重くは考えていません。そこ(重症)まで心配していません。逆に早い時期に見つかってリハビリすることで、来年はいい状態の僕が見せられる。

 28日にセカンドオピニオンを受診。早ければ29日に手術を受ける。だが前回は復帰まで約4カ月を要しており、来年2月のキャンプは別メニュー調整が確実。前回に照らし合わせれば、3月末の開幕にギリギリ間に合うかどうかと言える。

 国内他球団との交渉が始まる時期の発表となったことに、瀬戸山球団本部長は「すべてをオープンにして対応したいと思ったのではないか」と代弁した。

 金子

 オリックスを含めて、国内球団からいい言葉をかけてもらって感謝しています。(今後各球団の)話を聞かせてもらって、ちゃんと自分から(結果を)報告できればと思います。

 「FAに関して、彼がそれ以上答えられるものはない」と球団が配慮し、質疑応答はなかった。だが現状をさらけ出して、他球団との交渉テーブルにつく覚悟は伝わった。次は他球団がどう判断するのか、注目される。【松井清員】

 ◆金子の右肘

 04年ドラフトの自由獲得枠で入団となったが、右肘に遊離軟骨が判明。小泉球団社長が「故障が発覚した場合に自由枠は放棄できるのか?」と実行委員会で発言する騒動となった。手術を回避して入団に至ったが、11年2月に遊離軟骨除去と骨棘(こっきょく)除去手術を受けた。1軍での実戦復帰は同年6月で、同年は10勝4敗。12年6月にも右肘内側部分の炎症で登録抹消され、同年10月に復帰した。<金子のFA問題経過>

 ◆メジャー願望

 10月22日、金子が渡米。ワールドシリーズ第3戦を観戦し「あこがれの場所でやってみたい気持ちは変わらず持っています」。

 ◆FA宣言

 申請期限の11月11日に国内FA権行使を表明。「すべての可能性を考えたい」。

 ◆日米野球

 同14日の第2戦に先発。メジャー関係者が見守る中、5回3安打3失点。「投げている時も、今もそうだが、考える余裕がなかった」と語った。

 ◆容認せず

 オリックス瀬戸山本部長は同20日、ポスティング制度について現時点で「認めない」。

 ◆残留交渉

 同21日、オリックスが金子の代理人と4時間交渉。既に提示した3年最大15億円(推定)から、条件を上積みの可能性。金子側はオリックスへの愛着を示しつつ「せっかくなのでいろんなチャンスを見たい」。

 ◆今オフメジャー断念

 同24日、京セラドーム大阪でのファン感謝イベント参加後「今年オフのポスティングはしない方向で考えています」。