西武のキャンプ地、宮崎・南郷にも「松井電磁コーチ」が現れた。栗山巧外野手(31)が6日のフリー打撃で35スイング中6本の柵越え。中村1本、メヒア0本と試運転段階とはいえ、昨季の本塁打の両キングを抑える飛ばしっぷりだった。過去最高はシーズン12本、昨季は3本で本拠地西武ドームでは1本も打てなかった。変貌の兆しに「飛距離が伸びてきている感じがする」と笑った。

 オフに打撃を見つめ直した。「このままではダメ。何かを変えようと思った」。強打者の特性を考えると、気がつく点があった。「みんなバットのヘッドの抜けがいい」。正月にテレビで放送された巨人長嶋茂雄終身名誉監督のドキュメンタリー番組で松井秀喜氏が素振りの指導を受ける場面が映った。「引退した人なのに、本当にえぐいスイングをしていた。松井さんもヘッドの抜けがいい」と、電磁波を通して、すごみを感じた。

 構えからスイングを始動させ、バットの先端がムチのようにしなりながら出てきて、ミートとともにヘッドを返す。一連の動きを示す「ヘッドの抜け」がよければ、遠心力が増して飛距離が伸びる。「今までは(ミートポイントに)目指すところに合わせてヘッドを出しに行っていた。当てに行く感じですね。でも今はヘッドの通り道を先に作って、結果的に自然とヘッドが返っちゃう感じ。まだ言葉でうまく表現できない感覚ですが」と、しぐさを交えて理論を説明した。

 今季は並々ならぬ決意を秘める。「僕みたいなタイプは変えるなら今しかない。シーズン中にやると狂うから。12本は超えたいですね」。松井氏は沖縄でDeNAのキャンプを視察し、選手に“臨時”コーチ的に助言を与えている。だが遠い南郷でも松井“電磁”コーチのスイングから、栗山が進化を遂げようとしている。【広重竜太郎】