昨夏の甲子園大会で1試合22奪三振の新記録をつくった桐光学園(神奈川)松井裕樹投手(3年)が、国内のプロ志望を表明した。27日、川崎市内の同校で記者会見し「ストレートとスライダーで勝負したい」と意気込んだ。会見後にはプロ志望届を提出し、日本高野連に受理された。複数球団の1位指名が予想される10月24日のドラフト会議を12球団OKの姿勢で待つ。

 無数のフラッシュを浴び、詰め襟姿の松井は緊張した表情で決意を口にした。「自分の幼い頃からの夢であったプロ野球という舞台に挑戦したいという意志が固まり、本日27日に高野連の方にプロ志望届を出させていただくことを表明します」。話し終えると、少しだけ表情が和らいだ。

 昨夏の甲子園で1試合22奪三振の大会記録を樹立して以来、進路に注目が集まった。7月25日に神奈川大会準々決勝で敗れた後も「未定です」と明言を避けた。プロ入りを後押ししたのは8日まで台湾で行われた18Uワールドカップ。「上には上のレベルがたくさんいる。自分の実力がどのくらい通用するか試したいと思った。世界と戦ってみて自信がついた」と言う。野呂雅之監督(52)も「18Uから帰ってきて気持ちが固まったようです」と世界での活躍がプロへの思いを強くしたと説明した。

 174センチと小柄ながら全身を使い、最速149キロの直球を投げ込む。同じような腕の振りで投げる“消える”スライダーを武器に国際大会でも三振を量産した。そのスタイルのままプロに挑む。「勝てる投手を目標にしたい。監督から松井裕樹という自分のスタイルを作って、自分という物をしっかり築いていって欲しいと言われた。なので松井裕樹として育っていきたい」と言い切った。

 夏前には、投球後に三塁側に左足がステップするフォームをプロ野球関係者が批判していると耳に入った。だが、外転筋と呼ばれるお尻付近の筋肉が柔らかいから問題ない、とトレーナーに言われ「このままでいい」と吹っ切れた。「自分の得意球で勝負すれば通用する。三振にこだわりはない。インコースのストレートと、勝負球のスライダーの2つで勝負したい」と自信をみなぎらせた。

 来月24日に行われるドラフト会議では95年のPL学園・福留孝介(現阪神)の7球団競合を超える可能性がある。それでも「希望(の球団)というのはない」と言い切る。12球団OKということか?

 という質問に対しては「はい」と答えた。メジャーへの挑戦は考えておらず、「日本で自分の力を試してみたい、挑戦したいという気持ちでいっぱい」とした。

 会見後はユニホーム姿に着替え、ボールに『夢』と書いた。すがすがしい秋空の下で松井は「やっぱり制服よりこっち(ユニホーム)ですかね」と笑った。憧れ続けた夢の舞台へ、運命の日を待つ。【島根純】

 ◆松井裕樹(まつい・ゆうき)1995年(平7)10月30日、横浜市生まれ。小学2年で野球を始め、3年生から投手。6年時に横浜ベイスターズジュニアチームで12球団ジュニアトーナメント出場。横浜の青葉緑東リトルシニアに所属し中3では全日本選手権で優勝。桐光学園では昨夏の甲子園では10連続を含む1試合22奪三振の新記録を達成するなどして注目された。今夏は神奈川大会の準々決勝で横浜に敗れた。最速は149キロ。球種はスライダー、カーブ、チェンジアップ、カットボール。好きなゲームは「モンスターハンター」。家族は両親と弟。

 ◆ドラフト会議

 10月24日午後5時から、グランドプリンスホテル新高輪で行われる。1位指名は確定するまで入札、抽選を繰り返し、2位以降は下位球団からのウエーバー方式になる。ウエーバーの優先権は本来、オールスター戦の勝敗で決定するが、今年は1勝1敗1分け(得失点差もなし)で決着がつかず、「あみだくじ」によりパ・リーグに与えられる。パ最下位→セ最下位の順で指名、3位指名は逆にセ優勝の巨人から始まる。