しのぎあいの死闘を制した。第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の2次ラウンド初戦、オランダ戦に臨んだ侍ジャパンが、延長11回タイブレーク8-6で勝利を手にした。ピンチの場面でも直球勝負。小久保裕紀監督(45)が送り出した投手陣は1歩も引かなかった。平野佳寿投手(33)が、千賀滉大投手(24)が、増井浩俊投手(32)が、力で挑み続けた。最後は牧田和久投手(32)が締めた。守備でも攻めの姿勢を貫いた侍たちは強かった。

 4時間46分のしのぎ合いを制した。日本の歓喜と屈したオランダの怒号。東京ドームのベンチ裏に、ギリギリの勝負をした者にしか出せない野太い声が交錯していた。興奮そのままお立ち台に立った小久保監督の声はかすれていた。「執念だけです。一丸となった。もう執念」。会見ではこうも言った。「一生、忘れられない試合になった」。

 世界一を奪い返すため、オランダは乗り越えなければいけないヤマだった。上位にメジャーリーガーを並べた強打の相手。案の定、突き放しても追いすがってきた。3回まで両軍5得点の殴り合い。「ある程度の失点は覚悟していたけど、さすがだな」。先発石川を諦め、継投の打ち手で守りながら攻めていった。

 局面を、ことごとく力勝負の三振で制した。4回を連続三振で渡した平野。155キロを並べ、3番ボガーツ、4番バレンティンを連続三振に封じた3番手の千賀。8回1死満塁、3球直球を続けて空振り三振を奪った増井。「立ち向かったピッチャーたちと小林。ものすごかった」と感じ入った小久保監督も「今日は決めていた」と則本を9回に送る勝負をかけた。ジョーカーは最後の最後、あと1人で同点適時打を浴び、延長戦に入った。しかしブルペンには、牧田という大きな駒が残っていた。攻めに攻めたからこその産物だった。

 力で勝る相手から逃げず、力で制した。前日から「とにかく攻める。攻める気持ちがないとダメ」と暗示のように繰り返していた。攻め抜き、オランダを倒した後はこう言った。「今日は采配のいらない試合だった。勝ちたい執念とチームの輪。それしかない」。侍たちを前のめりにさせるという大きな采配を振るっていたから、こんなしびれる試合を取れた。【宮下敬至】