<プロボクシング:WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦>◇12月31日◇大阪・ボディメーカーコロシアム

 WBA世界ライトフライ級王者の井岡一翔(24=井岡)が、3-0の判定で3度目の防衛に成功した。同級3位フェリックス・アルバラード(24=ニカラグア)と1回から壮絶な打ち合いになったが、的確で多彩なパンチを当てて打ち勝った。巧みなガードも見せ、無敗だった難敵を攻略。14年は日本人初の無敗3階級制覇、他団体との統一戦も視野に連勝街道を歩む。井岡の戦績は14戦14勝(9KO)となった。

 壮絶な打ち合いを制した井岡は両腕を突き上げた。「気持ちで負けないように。途切れたら終わりなんで。こんなもんじゃないと自分を奮い立たせて、気持ちで負けずに戦いました」。ど根性で、計1500発超の殴り合いに打ち勝った。

 絶妙な距離感でリズムをとる本来のボクシングではなかった。リングが滑りやすく、足も使いづらかった。だが、不安を抱くことなく1回から真っ向勝負した。「前に出られたら見栄えも悪い。相手に打たせないように、くっついて勝負」。額をぶつけ合う接近戦でガードの間から何発もパンチを浴びせた。激しい戦いでも、主導権は最後まで譲らなかった。

 日本のエースとして、井岡ジムをけん引するリーダーとしての自覚がある。「僕がジムの看板を背負っている。チャンピオンというプレッシャーもある。でも、後戻りはできない。重圧を背負いたいヤツが、王者になれる。背負いたくなかったら、やめればいい」と熱い思いが口をつく。

 秋の白浜キャンプでは、心拍数を測りながら走り込んだ。重い砂浜の上で連打を繰り返し、足の踏み込みも強化した。「しんどい時は、誰でもしんどい。試合でも同じ。しんどくなってから、行けるヤツが強い」。ミット打ちでは心拍数を200以上まで上げる。限界まで追い込める心の強さが、井岡を支える。

 夢も膨らむ。次戦の選択肢にはフライ級に階級を上げての3階級制覇と他団体との統一戦も入る。「日本中の期待もあるし、挑戦するつもりでやっていきたい」と井岡。どの道に進んでも、胸に刻む言葉は変わらない。「試合ができる幸せを、忘れたらダメだよ」。叔父の元世界2階級王者弘樹氏が師事した名トレーナー、故エディ・タウンゼント氏が残した言葉だ。幸せをかみしめて連勝街道を進んでいく。【木村有三】