全勝大関を止めたのは、同じ日本出身力士だった。東前頭7枚目豊ノ島(32=時津風)が、大関琴奨菊をとったりで破り、11勝目を挙げた。日本出身力士の10年ぶり優勝を狙う2人は、小学生時代から知り尽くす旧知の仲。土俵で火花を散らし、優勝争いのトップを走るライバルを止めた。白鵬は鶴竜を退け、1敗を死守。賜杯の行方が、分からなくなってきた。
土俵を沸かせたのは、今場所の主役ではない。相撲巧者の豊ノ島だった。「俺が見てる側だったら『こいつ何してんの』となる。外歩けないです」。日本出身力士の10年ぶり優勝へ期待を背負う琴奨菊に今場所初めて土を付け、おどけた。
圧力を、目いっぱい受け止めた。「立ち合い一発に懸ける力が、すごく強かった。そう来ると思ってた」。もろ差し狙いで鋭く踏み込み、低く当たるも差せない。だが素早く右腕をたぐり、とったり。「一番意識する相手。せっかくこういう機会を2人で頑張って作れた。思い切りやった結果」。勢い余って土俵に転がると、目頭を熱くした。
最初の出会いは、小4だった93年12月の全日本小学生大会。琴奨菊が福岡から豊ノ島の地元高知の明徳義塾中に相撲留学すると、高校卒業までしのぎを削り、国体の団体戦はチームメートとして優勝。02年初場所で初土俵。新十両、新入幕は早かったが、番付は追い越された。私生活では夫人同士も親しい20年以上の親友。「ドラマの1ページを開いた感じ。引退した後に2人で話したい一番だなと思う。思い出の一番になるでしょうね」。それだけ特別な思いがあった。
1度だけ、引退を意識したことがある。昨年夏場所に大負けし、翌名古屋場所でも中日で1勝7敗。
「もう終わったな、勝てなくなったのかなと思った。まだ考えてなかったけど、いつか来るであろう引退は、思っていた以上に近くにあるのかもしれない」
幕内で2番目の低身長174センチの32歳には身を削る戦いの連続。だが反骨心で乗り越え、逆転優勝へ望みをつないだ。「これで明日負けたら、大関に申し訳ない。いろんな思いを背負って頑張ります」。土佐の男「いごっそう」が、九州男児に負けじと賜杯争いに食らい付く。【桑原亮】

