秋場所で初優勝を全勝で飾った大関豪栄道(30=境川)が、九州場所(13日初日、福岡国際センター)で初の綱とりに挑む。名古屋場所まで大関での勝率5割2分だった男が、V字回復の勢いで一気に横綱まで駆け上がれるのか。「綱に挑む」と題して3回にわたって連載する。
勝負の場所を3日後に控えた豪栄道はこの日、立ち合いの確認をして稽古を切り上げた。体重は1年前より1キロ軽い160キロ。だが、体の張り、特に背中の筋肉の盛り上がりは、昨年とは大きく違う。師匠の境川親方(元小結両国)も「他の大関にも負けない、いい肉の付き方をしてきた。今まで見劣りしてたんだけどね」と目を見張るほどだ。
14年秋の大関昇進後は左膝、右太ももなど故障続きで、筋力を維持するのがやっと。しかも、相撲を取るのではなく、器具を使った運動では限界があった。だが、故障が癒えた今年の夏巡業からは土俵での番数が増えた。比例して、体の張りも増す。高校時代から豪栄道を指導する岡武聡トレーナーは「稽古でできる筋肉と、トレーニングでできる筋肉は別物ですから」と言う。力士本来の鍛錬ができたことが、秋場所の全勝優勝にもつながった。
心の迷いもない。秋場所から、立ち合いで少しでも間合いが気に入らないと「待った」をするようになった。中途半端な立ち合いをなくし、頭から低く当たることを徹底している。周囲は綱とりの話題で騒がしいが、本人に雑念はない。「先場所も、その日の一番に集中することだけ考えて、いい結果が出た。その気持ちでやりたい」。3代目若乃花以来18年ぶりの日本出身横綱へ、平常心を貫く。【特別取材班】

