今年の大相撲を盛り上げた若手力士に、十両宇良(24=木瀬)がいる。173センチ、120キロ台の小さな体で、大きな相手を手玉に取るところが最大の魅力。負けても取材には必ず対応し、時に強い口調で本音を語ることもある。鮮やかな技が注目される業師には、人一倍の勝負に懸ける熱い思いがあった。

 激しい勝負の末、敗れた力士に質問する時はいつも気を使うが、十両とはいえ宇良も例外ではない。負けた日は当然ながら口は重く、質問が途切れると立ち去ろうとする。それでも、嫌な表情はせず毎日対応する宇良だが、その受け答えに感情が出る時があった。

 それは「今日の狙いは?」「研究されていると感じるか?」という質問の時だった。「狙いについては話しません」「研究されてるのはもちろんだし、だから僕も頑張ろうとしている。僕も向こうを研究している。お互いさまです」。普段の穏やかな姿とは対照的な強い口調に、あっけにとられた。

 そこには、人一倍の勝負に懸ける思いの強さが透けて見えた。関学大2年時には64キロまで体を絞って体重別大会に出場していた男が、わずか4年で体重を倍増させたのも、負ける悔しさを味わいたくなかったから。小さな体で勝つために、他人より頭も使ってきた。

 力×スピード=パワーと言われる中、70センチ向こうの仕切り線からぶつかってくる大きな相手に負けないためには? 出た結論は「速く当たるだけでは勝てない」。「相手より速く優位な体勢を作ること」。だからこそ他の力士と違って、いつも頭を下げて低い姿勢を作り、重心の置き方も細部までこだわる。相撲の探究心は誰にも負けない自負があるだけに、たとえ取組後でも「狙い」について明かせないし、研究負けしていると思われたくもないのだ。

 角界入りして2年弱。強さを求める道は、まだ半ばだ。「体重が増えて動きが悪くなることはない。145キロまで増やしたい」。業師を支えているのは、熱い情熱。注目の居反りだけではなく、希望通りの体になって土俵で暴れる姿を、早く見てみたい。【木村有三】

 ◆宇良和輝(うら・かずき)1992年(平4)6月22日、大阪府寝屋川市生まれ。4歳でわんぱく相撲に参加。京都・鳥羽高から関学大に進学。13年にロシアで開催された武術と格闘技の世界大会の相撲(85キロ未満の部)で優勝。14年全国学生個人体重別選手権無差別級3位。15年春場所初土俵。同夏場所序ノ口優勝。173センチ、127キロ。