今年1年を回顧する時期に入ったが、宝塚歌劇団もトップスターの柚希礼音、凰稀かなめが退団するなどさまざまなことがあった。特に印象に残ったのが、柚希からバトンを受けて星組トップに就任した北翔海莉(ほくしょう・かいり)だった。
宝塚きっての苦労人でもある。宝塚音楽学校に入った時の成績は最下位。多くは小さい頃からバレエ、歌のレッスンを受けているが、彼女は中学卒業直前に受験を決めて、まったくの未経験者だった。そんなハンディも人一倍の努力で解消した。趣味でフラメンコ、社交ダンスも習って、舞台に生かし、ドライブ好きがこうじて大型自動車の免許も取得した。
演技、歌、ダンスの3拍子そろった実力派として、トップの日も近いとみられた12年、5組とは別に、特定の組に属さない一芸に秀でた生徒の集団である専科に異動した。これでトップへの道は閉ざされたと思われたが、名作オペレッタ「THE MERRY WIDOW」に主演し、「ルパン」でモーリス・ブラウン、「エリザベート」ではヨーゼフで好演。安定感ある北翔の存在感が高まった。
そして、15年5月、柚希の後任のトップになった。入団から17年2カ月での就任は、大空祐飛の17年4カ月に次ぐ遅咲き。通常で12年前後、天海祐希は約6年のスピード就任だった。11月に東京初お披露目となる「ガイズ&ドールズ」を見た。ギャンブラー、スカイ役は宝塚時代の大地真央の当たり役で、キレキレの格好いい姿が強烈だった。持ち味の異なる北翔は歌が飛び切りうまく、清潔感ある品の良さがにじみ出ていた。これまで「何度も退団を考えた」という北翔だが、彼女の安定感ある舞台を見るにつけ、やめないで良かったなと思う。努力すれば、必ず報われる時が来る。【林尚之】




