きりりとした立役、愛嬌(あいきょう)のある女形、楽しそうに踊る姿など、中村種之助(23)から目が離せません。兄中村歌昇(27)との勉強会「第2回双蝶会」(8月23、24日、東京・国立劇場小劇場)への意気込みや、同世代との交流、今後の目標について聞きました。

 昨年に続き、2回目の「双蝶会」。今年は「菅原伝授手習鑑(てならいかがみ)」から「車引」「寺子屋」を上演する。種之助は梅王丸と武部源蔵を、兄歌昇は両演目で松王丸を演じる。大役に挑戦できるが、うれしさだけではない。

 「梅王丸は、父(中村又五郎)の襲名の時に近くで見ています。『こんなんじゃなかったぞ』って思い出せてしまうので、怖いですね。源蔵も(中村)吉右衛門のおじさんで見ていますから。あこがれの源蔵になれるよう120%の力では足りないでしょうが、それでも向かっていきます」

 播磨屋一門。小さいころから、父や、播磨屋を引っ張る吉右衛門を見て、純粋に「かっこいい。すごい」と思ってきた。大きな存在が間近にいた分、設定するハードルも高い。

 「去年の双蝶会を終えても達成感はなかったです。次の日にはもう『もうちょっとやりたかった、踊りたかった』って思っていました。今は、風呂場や歩きながら、せりふを言っている毎日です」

 充実の日々を送っているが、歌舞伎をやりたくないと思う時期もあった。部活でサッカーに打ち込んだ。

 「10代の変声期は役につかないので、歌舞伎から離れるんですけど、学校やスポーツが楽しくなって。このまま歌舞伎から離れるのかな、と思ったこともありました。自然に歌舞伎に戻ってきましたが、戻ってすぐは、歌舞伎をやって良かったとはなかなか思えなかったです。今は良かったなと思います。やりたいことがあって、実行できる日々、幸せだなと思います」

 来年の「双蝶会」開催もすでに決まっている。

 「10回は続けたいですよね。本興行で、そのお役ができることを目標にしています」

 立役も女形も、両方演じる機会が増えてきた。女形は吉右衛門に勧められてきたそうだ。

 「やってみると、周囲の方々に『もっとやればいいのに』と言ってもらうこともあります。兼ねる、の役者の道を考えたことがなかったんですけど、そういう道もあるのかなと思っています」

 同世代では尾上右近と食事に行くことが多い。仲が良さそうですねと聞くと「仲がいい体(てい)です」と、冗談なのか本気なのか分からない答えが返ってきた。真意を聞くと「みんなライバルですから。(右近とは)意見も合わないし、踊り方も全然違う。でも、意見が合わないからこそおもしろい。頑張っているのを見ると、なにくそ、と思えます。一緒に『連獅子』を踊らせてもらった時に、そうやるのか、と新鮮でした」と、切磋琢磨(せっさたくま)している様子を語ってくれた。

 プライベートの話になると顔がほころんだ。2月に生まれた兄歌昇の長男については「かわいい! 自分の子供があんなにかわいくなる自信がない」とべた褒め。自分のことになると「自分に余裕ができてからです」と、当分は歌舞伎漬けの日々を宣言した。【小林千穂】

 ◆中村種之助(なかむら・たねのすけ)1993年(平5)2月22日、東京生まれ。中村又五郎の次男。98年10月、国立劇場「佐倉義民伝」の徳松で初お目見え。99年2月、歌舞伎座「盛綱陣屋」の小三郎で初舞台。今年は1月歌舞伎座「廓三番叟(くるわさんばそう)」から始まり、3月の京都南座「矢の根」「闇梅百物語」など。7月は大阪松竹座で「芋掘長者」に出演中。163センチ、58キロ、血液型O。