40年代~50年代のハリウッド。共産主義者を弾圧する赤狩りの標的になった脚本家ダルトン・トランボが、名誉を回復するまでの物語。

 ブラックリストに載って仕事ができない間、偽名を使ったり、脚本を友人に託したり、書くことを諦めないトランボ(ブライアン・クランストン)。重くなりがちなテーマだが、ポジティブな登場人物と、声援を送りたくなる1つ1つのエピソードが展開される。「ローマの休日」が誕生する瞬間はドキドキしたし、分かっていながらも、オスカー授賞式の場面はハラハラしながら見た。

 トランボを取り巻く人々のキャラクターも丁寧に描かれた。コラムニストで業界ゴシップ通ヘッダ・ホッパーにはヘレン・ミレン。これがまた、むちゃくちゃ感じ悪くていい。B級映画を量産する映画会社社長にはジョン・グッドマン。モーレツ社長的な役回りが、物語を明るくしてくれる。娘役のエル・ファニングも良かった。「マレフィセント」のオーロラ姫は透明感とかわいらしさが前面に出ていたが、当作ではぐっと大人になった賢さが出ている。ジョン・ウェイン、カーク・ダグラスといった、スターたちがどういう風に描かれているのかも面白い。【小林千穂】

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