◆バンクーバーの朝日(日)

 「舟を編む」の時と似た感じがした。石井裕也監督は温かいな。戦前のバンクーバーに実在した日系人野球チーム「朝日」を題材にしたオリジナルストーリー。低賃金労働、差別に苦しむ日系2世の若者がパワーに圧倒されながら、バント、盗塁など小技、機動力を生かした独自のスタイルで、やがて白人まで応援するチームになっていく。

 妻夫木聡ら選手役の面々に、佐藤浩市、宮崎あおい、貫地谷しほり、鶴見辰吾、光石研、田口トモロヲ…。ごっつい顔ぶれのキャストがバランスよう配されてて、ダブつき感がない。海外ロケでなく、栃木県足利市に戦前のバンクーバーを再現した巨大セットにも驚いた。両翼75メートルの球場、漁村、街並みの出来。そんな文句なしの大作やのに大げさやないんがええ。そこが気持ちええ。

 野球、差別、社会の空気感の扱いも「なるほど」と思わせる説得力がある。丁寧で誠実。「伝えたいねん」って思いを感じるし、作品全体の雰囲気を妻夫木が上手に表現してる。リアルいうたら、亀梨和也と上地雄輔のバッテリー。元野球少年と横浜高野球部OBか。まじで野球うまいわ。【加藤裕一】

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