◆真夜中の五分前(日・中合作)

 14年最後は、1年の疲れがたまった年の瀬と、気持ちを新たに迎える新年、両方のシチュエーションで楽しめる映画を紹介したい。

 三浦春馬が演じる主人公の良は中国・上海の小さな時計店で修理士をしている。亡き恋人が時計をあえて遅らせ、時間を慈しんだクセを受け継ぎ「5分遅れの世界」を生きる。そんな良の生きざまを暗示するように、序盤から中盤にかけてゆったりした時が流れる。

 良の前に現れたルオランは、双子の妹ルーメイ(ともにリウ・シーシー)に嫉妬を抱き続け、過去に傷がある良とひかれ合う。その姉妹がモーリシャスで転覆事故に遭う。1年後、生き残ったルーメイから連絡を受けた良は「ルオランでは?」と疑念を抱く。瞬間、作品はラブストーリーから、謎が渦巻くサスペンスに急展開する。

 行定勲監督は、日本映画が結論などに明快さを求めるあまり、ワンパターンだと苦言を呈した上で、今作品の楽しみ方を示した。

 「この映画は明快じゃなく、あいまいだが哲学がある。映画を観客に委ねたい」

 結論があえて示されない、文学小説のような映画をかみしめ、考えをめぐらせる年末年始は豊かだろう。【村上幸将】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)