フランス発ミュージカルを小池修一郎氏が潤色・演出した月組公演「1789-バスティーユの恋人たち-」は、日本初演となる。トップ4年目に入る龍真咲が、若く血気盛んな農民の息子役で主演する。得意とする人物像だけに「原点回帰」となりそうだ。すでに幕を開けた兵庫・宝塚大劇場は6月1日まで、東京宝塚劇場は6月19日~7月26日。

 フランス革命を舞台にした闘士の戦い、宮廷の人間ドラマ、そして恋。フレンチロックにのせてつづるミュージカルは、宝塚版が日本初演となる。主人公は、年上の革命家らに刺激を与える農民の息子ロナンだ。

 「おけいこをしていて(役柄が)懐かしい! 何も知らない、血気盛んで、体当たりな役。格好良く見せなきゃとか一切ない。旋風を起こし、若さがもたらすエネルギーや血の多さを表現したい。宝塚の主人公では、そうない設定です」

 革命寸前までを描き、民衆にスポットが当たる群像劇。中でもロナンは「平民より身分が低い農民の息子で、年齢も一番下」の設定だ。王族、英雄が多いトップの演じるキャラクターとしては、異色でもある。

 「最初はキャリアが逆に…。(トップゆえ)落ち着きだったり、身分が高そうな振る舞いになったり、偉そうに見えたり(笑い)。でも、今回は誰よりもちっぽけな青年のエネルギーが大事。その出し方も最近やってなかったなって。月組としても私としても、代表作になるような作品に」

 美貌が特長の龍だが、一方で、野性味の強い役にも定評があった。

 「板についてしまっている男役の見せ方を、もっと無防備に追求したい。みんなにも、私のことを『主役だと思わないで』って(笑い)。いつもの私と周りが逆転していてもおもしろい。これが『ベルばら』だったら、セリフもない平民(の役)ですから」

 トップとしての新たな挑戦。衣装も「よれよれ。みんなの方がおしゃれ」と笑う。さらにロナンの恋人役は、トップ娘役愛希(まなき)れいかではない。早乙女わかば、海乃美月(うみの・みつき)が役がわり。愛希は革命部隊と対極をなす宮殿の核、王妃マリー・アントワネット役だ。

 「正解だと思う。(自身と対立軸を張れるのは)ちゃぴ(愛希)しかいない。嫁いで出産、フェルゼンとの恋まで彼女(王妃)自身の生涯が描かれているので、役を突き詰めてほしい」

 一方、早乙女、海乃には「緊張を忘れるぐらい役に陶酔、没頭して」と指導する。「ちゃぴとは同じペースで同じ作品をやってきて、その中で生み出されるものを大事にしてきた。今回は違う」。あうんの呼吸とは異なるリードの仕方を、龍自身が勉強中だ。

 トップ龍の体制になって4年目。月組メンバーも個々が個性を発揮し始め、群像劇には格好の時期だ。

 「4年目…4年目? 4年目か…ちょっとびっくりした! (初演作は)気持ちが違う。日々、闘いですね。私の時代としても安定期を迎えるとき、新作に挑戦できる。組の力が試される。月組と作品がリンクするような。突っ走ります」

 宝塚公演では101期生が初舞台。月組は2年連続で、新入団生を迎える。「フィナーレだけは主役っぽく、格好よく」と笑った。次世代を担う卵に、生きた教材を見せるべくステージに立つ。【村上久美子】

 ◆スペクタクル・ミュージカル「1789-バスティーユの恋人たち-」(潤色・演出=小池修一郎氏)12年にフランスで初演されたヒット作を、宝塚が日本初演。フランス革命に翻弄(ほんろう)された人々の生きざまを描くフレンチ・ロック・ミュージカル。1789年初頭、父を亡くした青年ロナンがパリに出て、ロベスピエールら革命家と知り合い、新時代到来に希望を託す。対照的に宮殿では、王妃らが華美な生活を続けていた。王妃の従者として出掛けたオランプはロナンと出会い恋に落ちる。

 ☆龍真咲(りゅう・まさき)12月18日、大阪府生まれ。01年「ベルサイユのばら2001」で初舞台。07年「パリの空よりも高く」で新人公演初主演。12年6月、月組トップ。昨年1月、轟悠がレット・バトラーを演じた「風と共に去りぬ」でスカーレット役。同年秋、涼風真世の当たり役だった妖精にふんした「PUCK」を再演。身長171センチ。愛称「まさお」。