瀬央ゆりあが初主演する「ガイズ&ドールズ」新人公演が今日29日、東京宝塚劇場で行われる。北翔海莉・妃海風の新トップコンビお披露目の新人公演に抜てきされた。95期の星組7年目で、トップ娘役を3人も輩出し、男役でも礼真琴、柚香光ら組の主要な位置を担う「黄金世代」の1人だ。

 記念すべき初主演舞台は、9月8日、兵庫・宝塚大劇場で経験した。北翔&妃海の星組新トップコンビによる本公演は2時間半に及ぶが、新人公演は1時間55分に短縮された。その分、相手娘役の綺咲愛里と、細かい動きに工夫を加えた。「セリフが減った分、もえポイントを」というように、「壁ドン」に続く、最近話題の女性へのさりげないスキンシップが盛り込まれた。例えば、女性のあごを引く「あごくい」や、やさしく頭に触れる「頭ポンポン」など。「流行にのりました。もえ場面は100点です」とちゃめっ気たっぷりだ。

 新人ラストチャンスで大役をつかんだ。

 「びっくりし過ぎると、逆に冷静に。いや、私、成績が悪いから(笑い)。新人公演主演って、成績がいい人たちがたどっていく道筋なのであろうと」

 同じ組の礼は既に本公演で主要キャストを得る。同期でも「先生のよう」と笑い、首席の礼はお手本でもある。

 生きた教科書に恵まれてきた。前トップ柚希礼音の就任と同時に星組へ配属。6年間、背中を見てきた。圧倒的な存在感、力強いダンスを武器に、苦手意識のあった歌を克服した柚希は、「できない言い訳はしない」を主義にする瀬央にとって、追うべき背中だった。

 「(柚希が)陰で血のにじむような努力をされているのを、そばで身をもって感じることができて。努力は実になる。頑張っていたら誰かが見てくれている」

 17年2カ月の遅咲きで新トップに就いた北翔海莉も同じ。宝塚音楽学校時代は劣等生だったが、レッスンを重ね、頂点へ上がった。

 「おふたりともすごく努力をされてきた。北翔さんは稽古場の時点から、歌の感情の入れ方が、鳥肌が立つレベル。お稽古をずっと見せていただいています」

 中学のとき、宝塚ファンだった小学時代のピアノの先生に誘われ、広島からバスツアーで宝塚を観劇。ゼロから勉強を始め、3度目の受験で合格した。

 「どんな端でも、与えられたものを全力で。演じるのではなく、役に“なる”ように」。先輩、同期、恩師へ-。恩返しは始まったばかりだ。【村上久美子】

 ◆ガイズ&ドールズ 舞台は48年頃のニューヨーク。ギャンブラーのスカイは、自他ともに認めるプレーボーイ。仲間と、お堅い女を一晩で口説き落とせるか賭けをする。本公演は北翔海莉、妃海風の新トップコンビ本拠地お披露目。

 ☆瀬央(せお)ゆりあ 6月15日、広島市生まれ。09年4月「Amour それは…」で初舞台。星組に配属。昨年1月「眠らない男・ナポレオン」新人公演で2番手役。同期には実咲凜音(宙組トップ娘役)、愛希れいか(月組同)、妃海風(星組同)ら。身長172センチ。愛称「せおっち」「なおみ」。