大阪市の橋下徹市長(46)が31日、大阪市役所で、親交があった歌舞伎俳優の故中村勘三郎さん(享年57)から、文楽協会への補助金カットの際に「方針は間違ってない」と激励を受けた恩義、感謝を語った。

 この日は、今年4月に東京・浅草で「平成中村座」を復活させ、秋には5年ぶり3度目の「大阪平成中村座」(10月25日~11月26日=大阪城西の丸庭園内特設劇場)を上演する勘三郎さんの長男、中村勘九郎(33)の表敬訪問を受け、勘三郎さんとの秘話を明かした。

 文楽への補助金削減の際、橋下市長は文化団体、一般市民ら各所から非難を受けたが、闘病中の勘三郎さんから、知人を通して「文化行政に関して、方向は間違っていない」との言葉をもらったといい、そのメッセージに「すごく勇気をもらった」と語った。

 勘三郎さんは、伝統を重んじつつも「楽しめる歌舞伎、理屈抜きにおもしろい歌舞伎」をモットーとし、橋下市長もその姿勢に共感。以前から、勘三郎さんの舞台観劇にも足を運んでおり、親交を深めてきた。

 一方で、歯に衣(きぬ)着せぬ橋下市長の発言に対し、勘三郎さんは「言い方(言葉づかい、対処法)はあるけどね」と諭したこともあった。それでも、将来を見すえ、大阪市の再建のため、文化行政の見直しを決めた橋下市長の判断を指示した。

 橋下市長はもともと、勘三郎さんのチャレンジャー精神には感服。一方で、勘三郎さんの舞台にかける情熱、繊細さをともなうプロ意識を尊敬してきた。

 勘三郎さんが特発性両側性感音難聴で倒れる直前の舞台となった5年前の「大阪平成中村座」も、大阪城で観劇。「天守閣を見せるタイミングを何度も何度もはかられて。1秒単位で動きを計算しておられた」と振り返った。

 大阪城に歌舞伎の仮設小屋を作った斬新で奇抜な発想と、舞台を見せる上での細心の留意。橋下市長は、勘三郎さんを思い「(訃報は)本当につらかったです」と話していた。