女優大竹しのぶ(68)が、ミュージカル「GYPSY」(5月6~24日=東京・日本青年館ホール、6月に愛知、福岡、大阪で上演)に主演する。初演から3年ぶりの再演で、“究極のショービジネスマザー”という主人公ローズを演じる。役への思い、そして女優、母としての素顔に迫った。【小谷野俊哉】
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3年ぶりに名作「GYPSY」のローズという役と向かい合っている。
「もう3年たっちゃったのかなっていう感じ。でも、再演できるっていうのは、すごくうれしいことですね」
初演の時に大きなプレッシャーがあった。日本での上演は1991年(平3)以来、32年ぶりだった。
「結構長く、やっていなかった。有名なミュージカルだけど、日本ではあまりなじみがない。知らない人もいるかもしれないけど、私はこの中の『サム・ピープル』っていう歌が、すごい好きで。ベッド・ミドラーを見たのかな。テレビで、たまたま見たのかもしれないんですけど、すごいガッツがあって、かっこいい歌だなと思ってて。で、まさかそれを自分が演じるとは思っていなかった。それで、あの歌を歌えるんだと思って、うれしかったですね」
喜びは、すぐに苦しみに変わった。
「でも、実際に初演で現場が始まったら、すごく難しくて。これはちょっと、本当に頑張らないといけないなっていう感じでした。まず、ちゃんと歌えるようになりたいっていうのは、ほんと最低限の目標っていうか、なんとか形になるように頑張らなくちゃっていうぐらい難しかったです」
その苦労が、3年後の再演につながった。そして、それはさらに、見る人の期待値を高める。
「そうですね。前回はもう本当に一生懸命、その時のできる限りをやったけれど、やっぱりもっとクオリティーの高いものを見せなくちゃいけないとは思ってはいるので。前の方が、まだ良かったって言われないようにしなくちゃいけない。再演の場合は、結構どの作品でもですけど、難しいですね。前にやっていたから楽っていうよりも、前にやったからこそ大変だなっていうのはあります」
演出は3年前と同じ、英国人のクリストファー・ラスコム氏。
「やっぱり前よりも、もっと深くなっているし、ある程度は完成したものがイメージとしてある。それを更に、前とは全く違って細かくやってくれているので、すごくお稽古が新しいです」
間に通訳を入れての演出も、再演ならではの厳しい注文がある。
「そうですね。翻訳ひとつにしても『この日本語、どうなってますか』とか、すごくありました。私たちも『この英語ってどういう意味なのかな』と考えて、翻訳の高橋(亜子)さんとも一緒になって、もっとより伝わりやすいような言葉を探したりとか、そういうところからもやっていますね」
歌って、演じるミュージカル。演者にとって普通の芝居、ストレートプレイとの違いは。
「いや、私の中ではそんなに大きな違いはないです。ただ、音楽が入ることで、逆にすごくやりやすいっていうか、楽しくなるなっていうのは思いますね。もちろん言葉で、自分のセリフが劇場に浸透していく喜びもありますけども、音楽とともに言葉がみんなのところに入っていくっていうのは、またすごく違う喜びがある。でも、芝居で歌うっていう意味では、実はあんまり変わらないんじゃないかなって思うんですよね」
ミュージカルとストレートプレイより、舞台と映像の違いの方が大きいと感じている。
「この作品の場合、歌稽古は3月の中旬ぐらいから始まっています。ここまで1カ月半、私たちはお稽古ができています。ここから更に本番も入れれば、1カ月半とか2カ月できるから、より深くなっていく。こんな楽しいことはない。やっぱり映像っていうのは、その1回だけなので、そこに最高のものを持っていかなくちゃいけない。しかも、今のテレビだとお稽古も余計にすることはない。昔のテレビドラマだったらやっていたけど」
今のドラマでは出演者がそろっての本読み、ドライリハーサルもあまりない。
「だから、もう本当に『初めまして』の人と、親子であったりとか、大事な人になったりとかするわけなんです。で、映像の方が集中力っていうか、違う集中力が必要かもしれないですね。でも、舞台はお稽古があるので。お稽古の間にみんなとのコミュニケーションも取れるし。お稽古が楽しい」
(続く)
◆大竹(おおたけ)しのぶ 1957年(昭32)7月17日、東京都生まれ。74年フジテレビ「ボクは女学生」で女優デビュー。75年映画「青春の門 筑豊編」で本格デビュー。76年NHKテレビ小説「水色の時」。79年映画「あゝ野麦峠」。86年TBS「男女7人夏物語」。87年TBS「男女7人秋物語」。92年映画「死んでもいい」。82年にTBSディレクター服部晴治氏と結婚も87年に死別。88年明石家さんまと再婚も、92年(平4)に離婚。158センチ。血液型A。
◆ミュージカル「GYPSY」 ローズ(大竹)は2人の娘、ルイーズ(田村芽実)、ジューン(富田鈴花)のステージママ。だが、才能のあるジューンが、駆け落ちしてしまう。ルイーズと再起を図るが、手違いでストリップ劇場の仕事を受けてしまう。
◆公演スケジュール
5月6~24日 東京・日本青年館ホール
6月5~7日 愛知・刈谷市総合文化センターアイリス大ホール
6月12~14日 福岡・キャナルシティ劇場
6月19~23日 大阪・森ノ宮ピロティホール



