昨年1月に亡くなったやしきたかじんさん(享年64)の最後の弟子で、元マネジャーK氏(49)が31日、作家百田尚樹氏のノンフィクション「殉愛」で名誉を傷つけられたとして、百田氏を含め、さくら夫人側を相手に提訴する考えを明かした。

 この日、大阪地裁で、さくら夫人が、元弟子の打越元久氏にインターネットラジオなどで、名誉を傷つけられたとして、1000万円の損害賠償を求めた裁判の第2回口頭弁論があり、K氏は、打越氏とともに証人出廷し、証言した。

 両氏は原告側、被告側双方の代理人弁護士の尋問に答え、打越氏がラジオで「さくら夫人が『がんが移る』と言った」などと口にした発言について、背景や真意を説明した。

 弁論は今年2月以来、半年ぶりの再開となったが、裁判所は尋問が終わると、和解勧告。閉廷後に、双方代理人が和解交渉の席に就いた。原告のさくら夫人側は「和解成立はまだこれからの話し合い次第」と多くを語らなかった。

 しかし、被告側は裁判所から場所を移して、打越氏、K氏がそろって会見。民事訴訟の場合は、裁判所の心証がある程度固まった段階で、裁判所から和解勧告があるのが通例で、被告側代理人は「拒否するものではないので(交渉に)応じた」と説明。一方で、打越氏、K氏はともに「和解を受け入れるのではなく、最後まで闘いたい」と、徹底抗戦を主張した。

 とはいえ、現状では、さくら夫人の名誉を傷つけたとされる打越氏の発言にいたった経緯について、両氏はその背景、大前提に「殉愛」があるとしているが、現在の裁判では、そこは争点にはならない。

 両氏は「殉愛で事実ではない記述があり、自分の名誉もさることながら、師匠(たかじんさん)の名を汚した」とし、今後、K氏は提訴する意向を明かした。

 K氏は02年春からたかじんさんのマネジャーを務めており、長く信頼関係にあった。たかじんさんが亡くなる5日前にも面会しており、遺言書の作成にも弁護士ともども立ち会ったという。

 「こういった(裁判続きの)状況に陥ったのは、僕の責任でもある。師匠のずっとそばにいて、僕がこの流れを止められなかった。打越さんら(旧知の関係者)にも迷惑をかけた。最後は僕が行かんと(提訴しないと)収まらないかな」

 K氏は「殉愛」の中で、真実ではない記述があったことなどをあげ、百田氏はもちろん、さくら夫人を相手にすることも視野に、訴訟の覚悟を決めている。今後、弁護士と相談しながら提訴への準備を進める。

 昨年1月にたかじんさんが亡くなってから1年半が過ぎ、ノンフィクション本をめぐり、夫人と長女の親族同士の争い、旧来の知人を巻き込んでの訴訟が広がっており、その流れは止まりそうもない。

 この日の裁判は10月28日に判決言い渡しの予定。和解の場合は、9月30日までに成立する。