「となりのトトロ」などで知られるジブリ映画の歌姫井上あずみと、娘の小学生シンガー、ゆーゆ(11)の親子が、このほど総移動距離1万8000キロに及ぶ初の中国ツアーを成功させた。同国でもジブリ人気は絶大。「一緒に大合唱してくれた」といううれしい体験を聞いた。

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 昨年末の深センを皮切りに、今年1月まで広州、成都、上海など10カ所で公演を行い、約1万5000人を動員した。「となりのトトロ」主題歌や、エンディングテーマ曲「さんぽ」、「天空の城ラピュタ」の主題歌「君をのせて」、「魔女の宅急便」イメージソングなど多くのジブリ音楽で知られる井上は中国でも大人気。客席数1000人以上の会場はファミリー客でどこも満員となった。

 井上「『魔女の宅急便』は好きですか? と日本語で聞いたら『好きですー!』と日本語で返ってきて驚きました。『となりのトトロ』や『さんぽ』を大合唱してくれたり。アウェー感はまったくなくて、海を越えて家族みんなで楽しめるジブリアニメの力をあらためて実感しました」。

 ゆーゆ「お客さんがとにかく明るいの。どこに行ってもみんな手拍子して楽しんでくれてうれしかったです」。

 ゆーゆは7歳で歌手デビュー。12年に「6さいのばらーど」がNHK「みんなのうた」に採用され、これまで3曲を担当している売れっ子小学生シンガーだ。母親譲りのはつらつとした歌声が持ち味で、ソロのステージも堂々たるもの。キュートなルックスと歌声で熱烈な歓迎を受けた。

 ゆーゆ「たくさんの人の前で歌うのは大好き! 同世代や小さい子もたくさん来てくれて、喜んでくれて本当に楽しかった。お父さんと焼き肉を取り合う『タンタンタン』という曲では、映像を見ながらみんな笑ってて最高でした。公演後、警備員さんまで『フォト、OK?』と写真を撮りに来てくれて、一緒に自撮りしたり。みんな優しかったです」。

 難病と闘う子供たちのためのボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ」のイメージソング「みっつおしえて」は、親子ならではのハーモニー。曲の意義に現地の教育庁が動き、大勢の子供が招待されたのも異例のことだった。

 井上「ボランティアに理解が深いんですね。歌詞の内容が分かれば楽しんでもらえるかなと考え、スクリーンに映像と中国語訳を投影して歌いました」。

 予定していた飛行機が飛ばず、陸路で7時間かけて移動したことなど、中国ならではのハプニングも楽しい思い出という。好奇心旺盛なゆーゆは未知の食材にも興味津々。食の異文化交流も大いに楽しんだ。

 ゆーゆ「いちばんおいしかったのはアヒル。あと、ウサギの脳みその鍋料理も出てきたの。ふわふわしていて、白子のもっと上みたいな高級な感じの味。虫以外なら、何でも食べてみたいから大丈夫!」。

 日本でも「井上あずみ&ゆーゆ」として全国各地のステージに引っ張りだこだ。今春も、タイ公演、イタリア公演がすでに決まっている。

 井上「親子で呼んでいただけて、国境を越えて歌でひとつになれるのは幸せですね。親子といえども、才能がなければさすがにステージには出せない。ゆーゆはうまいというか、味がある歌声なんですよ。私にとっては、歌手としてライバルであり、頼もしい存在」。

 ゆーゆ「ママの歌い方をまねしてきただけ。高い音をどこから出してるか分からない声。ずっとママの声を参考にしてきたから」。

 井上「世界的なジブリの曲があって、娘とも共演できて。周りからは『ずるい』と言われます(笑い)。総移動距離1万8000キロの中国ツアーを経験して、私は意外とタフなんだと分かったので、これからも頑張って歌い続けるぞという気持ちです」。